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産業を支える物流と金融で、世界同時多発的にイノベーションが加速している。AI(人工知能)などの技術を生かして業界特有のひずみを解消し、生産性を向上する。伝統的なモノ作りや商売のやり方も、先端技術の力を借りて大きく変わり始めた。

急速に経済が発展するインドネシアでは物流の非効率さが大きな社会課題になっている(写真=NurPhoto/Getty Images)

 新興国を訪れたことのあるビジネスパーソンなら、間違いなく渋滞に悩まされた経験があるはずだ。荷物を山積みにしたトラックが立ち往生している姿も珍しくない。そんな未整備な物流分野のひずみを解消しようという動きが、世界各地に広がっている。東南アジアの配車サービス、グラブ出身のローリン・ジョトセティアディ氏がCEO(最高経営責任者)を務めるインドネシアのロジスリィもその一社だ。

 荷主とトラックのマッチングはどの国でも非効率だが、インドネシアは特にひどい。ローリンCEOは、「荷主は10回のうち1~3回は最適な運送業者を見つけられていない」と指摘する。

 国内には約800万台のトラックが稼働しているとみられるが、保有台数が30台以下の零細業者がほとんど。その結果、配送ルートや荷物の量が限られ、荷主の要求に十分応えられない。

 その課題にロジスリィは挑む。配車サービスの仕組みをトラック物流に応用。荷主は、荷物の量や目的地、日時などを同社のサイトに入力するだけ。ロジスリィが工場や倉庫でのトラックの待ち時間、荷物の積み込みに要する時間、道路状況などを考慮した上、最適なトラックを手配する。サービス開始から1年で2万5000台のトラックが登録され、「2020年中には100万台」という目標にまい進する。

 物流版の配車サービスは先進国でも広がっている。「物流のウーバー」とも呼ばれる米コンボイは、米アマゾン・ドット・コムで物流を担当していたダン・ルイス氏らが15年に立ち上げた。同社によれば、運送会社は米国でも91%がトラック6台以下の小規模事業者だ。

 荷主がスマートフォンのアプリに条件を掲載すると、近くのトラックのドライバーが入札。荷主が相手を選べば取引成立だ。アマゾン元幹部が立ち上げただけに社内には「アマゾン流」のカイゼン文化も根付く。CPO(最高製品責任者)のジアド・イスマイル氏は「『ラブ・プロブレム、ノット・ソリューション(問題解決を愛し、解決手段を愛すな)』がモットーだ」と話す。

写真左から、配車サービス大手グラブ出身のローリン・ジョトセティアディCEO、アマゾンで物流を担当していたダン・ルイスCEO、騰訊控股で自動運転部門を統括していた馬喆人CEO

トラックの自動運転化

 物流業界のひずみを解消するのは、配車サービスだけではない。自動運転技術にも期待が集まる。

 中国では自動運転で物流の効率化を図ろうとするスタートアップの存在感が増している。18年に上海市で創業した嬴徹科技(インセプティオ・テクノロジー)は、トラックの自動運転技術の開発を進める。中国ではネット通販が爆発的に普及しており、遠距離トラックのドライバー不足や過重労働が深刻な問題になっている。馬喆人CEOは、そこに勝機を見いだした。

 馬氏は、SNS・ゲーム大手の中国・騰訊控股(テンセント)で自動運転分野への投資などを管轄していた。電気自動車の中国・上海蔚来汽車やシンガポール物流大手グローバル・ロジスティック・プロパティーズ、中国商用車管理大手G7のトップらと創業した。

 「21年末にレベル3の自動運転技術を搭載したトラックの量産を開始したい」と馬氏は語る。レベル3は普段は自動運転だが状況に応じてドライバーが介入するというもの。遠距離トラックは基本的に物流拠点→高速道路→物流拠点といった具合に走行経路が限定されるため、「乗用車よりも3〜4年ほど早く実現できる」と説明する。

日経ビジネス2020年1月13日号 36~39ページより