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各国でテック企業へ逆風が吹く。しかし地球規模で見れば辺境はまだ残る。自らインフラを構築し、新たな顧客とデジタル経済圏を切り開く動きは止まらない。国の手の届かない領域を補い、利用者と国家の信頼を得る。それが新たな姿だ。

グーグルが通信インフラの整備を進めるウガンダでは、同国初の携帯電話工場も誕生。同国出身の歌手キルヤ氏(右)はネットを通じ人気を得た(写真=大:Luke Dray/Getty Images)

 アフリカ東部、ウガンダ出身のソウル歌手、モーリス・キルヤ氏は最近、世界中にファンが増えたと実感している。「日本でも今度、コンサートを開く。楽しみにしているよ」と語る。

 キルヤ氏の活動拠点はウガンダの首都カンパラ。世界のファンを獲得するために使っているのがインターネットだ。米グーグルが運営する動画サイトのユーチューブに楽曲を投稿し、活動の様子を撮った写真をインスタグラムなどのSNSに載せている。既にハリウッド映画2本に出演した。

 「通信速度が大幅に向上したおかげでプロモーションに力を入れられるようになった」。キルヤ氏はこう語る。それはグーグルのおかげかもしれない。

グーグル、アフリカで自ら通信網

 キルヤ氏がネット接続環境の改善を実感し始めたのは2013年ごろ。グーグルが光ファイバー網の敷設を始めた時期と重なる。カンパラとその周辺で整備した光ファイバーの総延長は既に890km。地元の携帯電話会社やネット接続会社に有償で提供する。

 通信環境が整備され、ウガンダでも携帯電話の普及が本格化し始めた。19年には、中国メーカーによる同国初の携帯電話工場が稼働を始めた。

 ウガンダの人口は約4300万人。ただ電化率は約2割と世界でも最低レベルだ。そうしたインフラ整備が追いつかないアフリカの各都市に光ファイバー網を建設するグーグルの「プロジェクト・リンク」の第1弾が、カンパラだった。その後ほかの国にも対象を広げ、ガーナでは首都アクラを含む3都市で総延長1070km、リベリアの首都モンロビアでは総延長180kmの光ファイバー網を敷設済みだ。

 現在は三井物産などと共同で設立した企業を通じプロジェクトを推進し、18年にはカンパラ郊外の家庭に直接光ファイバーを引き込む事業に乗り出している。グーグルの親会社、米アルファベットは成層圏に飛ばした気球をネット接続の中継局に使う「プロジェクト・ルーン」を推進する。既にケニアの通信会社やウガンダ政府と契約を交わすなど手を緩めない。

 発展途上国を中心に世界ではまだ43%の人々がネットを利用できていない。欧米などでは強い逆風が吹き始めた「GAFA帝国」だが、地球全体を見れば開拓できる領域は残されている。

 「世界は今、変わろうとしている。ゴールドマン・サックスのCEO(最高経営責任者)がDJをする時代にね。さあ、これから我々がクラウドで起こす金融革命についてお話ししよう」

 19年12月初旬、米アマゾン・ドット・コムのクラウド部門、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)が米ラスベガスの巨大会議場で開いた開発者会議。世界から約6万5000人、日本からも約1700人が参加した会議の基調講演で、米ゴールドマン・サックスのデービッド・ソロモンCEOが趣味のDJを披露した後、壇上でこう切り出した。

アマゾンのクラウド部門は猛烈な勢いで成長している
●アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)の 四半期業績推移
AWSで公共部門を担当するテレサ・カールソン副社長(左)。イベントにDJとして登場したゴールドマン・サックスのデービッド・ソロモンCEO(下)
日経ビジネス2020年1月6日号 34~37ページより