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GAFAの天敵と呼ばれる欧州委員会のキーパーソンが本誌のインタビューに応じた。ベステアー委員は「公正な競争」を盾に、さらなる追及を辞さない構えを示した。大統領選を控えた米国でも、巨大テック企業の解体を求める声が日に日に高まる。

欧州委員会のマルグレーテ・ベステアー委員。2014年に競争政策の担当トップに就くと、GAFAに対してEU競争法違反の調査に取りかかった。「GAFAが最も恐れる人物」といわれる

 ベルギーの首都ブリュッセルにある欧州委員会の本部に、「GAFAの天敵」がいる。デンマーク出身のマルグレーテ・ベステアー委員だ。3件のEU競争法(独占禁止法)違反で米グーグルに1兆円近い巨額制裁金の支払いを命じたほか、米アップルと米フェイスブック、米アマゾン・ドット・コムに対しても調査を続けている。

 ベステアー委員は独シーメンスと仏アルストムの鉄道事業統合計画を却下するなどEUや日本の企業にも厳しい姿勢で臨み、欧州委員長の候補にも名前が挙がっていた。ドナルド・トランプ米大統領からも「これまで私が出会った誰よりも米国を嫌っている」と言われるほどのキーパーソンだ。

 本誌のインタビューに応じたベステアー委員は、GAFAを追及する理由について毅然とした口調でこう話した。

 「勝者となり、ルールを決めている。子犬が吠えたりジャンプしたり好き放題にしてもあまり気にしない。だが、巨大な犬がうなり声を上げ始めると状況は変わってくる。わずかにでも契約を変更し始めると市場全体に影響が及ぶため、果たすべき責任がある」

 巨大化し、あらゆる商取引に入り込んだGAFAの「横暴」は、市場原理をゆがめ消費者の利益を損う。それを許さないとの信念が伝わってくる。

さらなるグーグル追及に含み

 「デジタル市場はその性質上、支配的な企業が市場を勝ち取った場合に、競合他社が参入するのは非常に難しい。公平なチャンスが得られないのであれば、競争を阻害した企業に積極的な行動を求めていくのが基本的な考えだ」

●ベステアー委員による独占禁止法違反の調査や罰金

 その言葉通り、2018年にはグーグルが基本ソフト(OS)「アンドロイド」関連のビジネスで自社サービスを不当に優遇したことがEUの競争法違反に当たるとし、単独企業としては過去最大の43億4000万ユーロ(約5300億円)の制裁金の支払いを命じた。グーグルはアンドロイド端末に同社の検索ソフトを搭載することを求めており、競争相手を排除していると判断した。

 グーグルにはさらに競争条件を整えることも求めたことで、アンドロイド端末で検索ブラウザーを開いたときに複数の検索ソフトを選択できるようになった。だがベステアー委員は「これによって競合他社が公平なチャンスを得られるかはまだ判断がつかない」と言い、さらなる追及に含みを持たせている。

 ベステアー委員は課税逃れでもGAFAを追及している。市場を席巻している国で納税せず、税率の低い国で一括して納税処理をしているのは不公平との判断からだ。16年にはアップルに不公平な税制優遇措置を与えているとして、アイルランド政府に同社への追徴課税を命じた。結果、18年に同政府はアップルから143億ユーロ(約1兆7400億円)の追徴課税を徴収。ルクセンブルク政府とアマゾンにも同様の指示を出している。