
落としどころが見つからない米中貿易戦争、日韓問題、香港情勢。2020年もこの3大難問がアジアと世界を揺さぶるのは間違いない。専門家の意見を基に、その現実解を探る。
「利害を共有しない初の大統領」。フランスのマクロン大統領が最近放った言葉だが、誰のことを指すか、もうお分かりだろう。善かれあしかれ、19年も20年も、世界の行方を最も左右するであろう人物、米国のトランプ大統領のことである。
攻撃が得ならば「仮想敵」に
トランプ氏の行動原理は比較的分かりやすい。20年11月に大統領選の投開票を控える中、味方にできる人はすべて味方に、攻撃した方が得になるならば仮想敵と見なす。これまで進めてきた米国第一主義の路線をより強化しているようだ。
そう考えると、19年に積み残した3大難題の一つ、米中貿易戦争は、そう簡単に折り合う話にはならない。「貿易戦争が米国経済にプラスになるとトランプ氏自身が考え、中国に圧力をかけている」(世界的投資家のジム・ロジャーズ氏)からだ。中国情勢に詳しい野村総合研究所の李智慧上級コンサルタントも「中国政府としても大幅な譲歩は難しい」と話す。
20年には、トランプ氏による攻撃の矛先がさらに拡大する恐れがある。マクロン氏が「利害を共有できない」と強烈に批判したのも、米中貿易戦争が米仏貿易戦争、米欧貿易戦争へ戦線拡大するのを懸念したためだ。
「EUは中国よりも悪質だ」。ここへきて、こう豪語し始めたトランプ氏。実際、その攻防は既に始まっており、米IT巨大企業を意識したフランスの「デジタル課税」に対する報復策として、航空機やバッグへの制裁関税を仕掛けようとし、準備に入っている。
「20年以降、もはや修復不可能な亀裂や断絶が世界中で出現するのではないか」。みずほ総合研究所の高田創エグゼクティブエコノミストも危機感を隠さない。
もっとも、世界各地に亀裂や裂け目が入る中、米国とも欧州とも中国とも比較的・相対的に良好な関係を保ってきた日本。それだけに、隣国・韓国との関係悪化は20年以降も、ひときわ目立つ形になりそうだ。
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