成熟する国内市場の中でも急成長を続ける「飲食宅配サービス」。2020年は2強であるウーバーイーツと出前館のシェア争いがさらに加速しそうだ。その覇権争いは日本の労働市場全体にも影響を与えかねない。


<span class="fontBold">ウーバーイーツは柔軟な働き方を売りに配達員を急増させた</span>
ウーバーイーツは柔軟な働き方を売りに配達員を急増させた

 19年4月、都内のイベントスペースに、年齢も性別も様々な数十人が集まった。警視庁交通部の講師による交通安全の講演を聞き、VR技術を使った自転車の運転シミュレーターで自分の運転の仕方をチェックする──。

 このイベントはライドシェア大手の米ウーバーテクノロジーズが開いたもの。14年8月に米国で開始し、16年9月以降は日本でも急拡大する飲食宅配サービス「ウーバーイーツ」の配達員を集めた。配達員はウーバーに雇用されているわけではなく、アプリを通じて単発で配達を請け負う。勤務時間や場所に縛られない、「ギグワーカー」とも呼ばれる新しい働き方だ。

 「3カ月で2000件ほど配達してきた」とイベント参加者の一人は語る。黒や緑のバッグを背負って自転車などで市街地を駆ける配達員は、3年間で国内1万5000人以上にまで増えた。

 成熟が進む国内市場だが、中には急成長業界もある。新手の「出前」だ。

 日本における出前サービスの歴史は江戸時代中期に遡る。以来、300年以上の歴史を紡いできたが、1970年代にファミリーレストランが普及すると状況が一変。外食が“特別なイベント”でなくなると、出前のニーズも減少した。それ以降は、そば・うどんやすし、ピザなどに限定されてきた出前だったが、ウーバーイーツは宅配に対応していなかったファストフード店やレストランチェーン、地元飲食店などにも提携網を拡大。現在は、全国1万4000店以上の飲食店の宅配を代行している。

 19年はマクドナルドの一部商品を半額にするなどのキャンペーン攻勢で一気に知名度が向上した。富士経済が11月に発表した国内外食産業の調査結果によれば、19年の外食デリバリー市場は2936億円で前年比4.9%増。ウーバーイーツが主力とするハンバーガーや牛丼が伸びをけん引している。

 「ウーバーイーツは出前需要の多い19年12月から20年1月にかけて、新規顧客獲得のために大々的な販促施策を打つはずだ」と業界関係者は語る。

次ページ 出前館、“黒船迎撃”に自信