ネット動画の広がりで、記者会見を生配信するコンテンツが存在感を増しつつある。登壇者の発言や挙動をそのまま見たいという消費者の「欲求」が背景にある。謝罪会見のすべてが可視化される今、企業にはさらに高い対応力が求められている。

(写真=左:EPA=時事、他3点:共同通信)

 世間が謝罪を受け止めるツールも変わりつつある。「謝罪の流儀」の潮流として、インターネットを活用した会見の生配信が存在感を増しつつある。スマートフォン(スマホ)が広く普及し、若年層を中心に動画をリアルタイムで視聴する習慣が浸透し始めた。あらゆる動画素材があふれる中で、人気の高いコンテンツが記者会見の生配信だ。

 「ここまで記者会見の生配信ニーズがあるとは思わなかった」。インターネットテレビ局「Abema(アベマ)TV」ニュースチャンネルの山本剛史プロデューサーは驚きを隠さない。運営するAbemaTV(東京・渋谷)はサイバーエージェントの子会社で、テレビ朝日や広告代理店も出資して2015年に設立。16年からネットTV局として放送を開始している。アニメやドラマ、ドキュメンタリーなど趣味の娯楽チャンネルを多く抱える中でも、人気が高いのはニュースチャンネルだ。今年に入り、開局当初に目標として掲げた1000万WAU(1週間当たり視聴数)を超える週が続出。その原動力は会見を最後まで生中継する番組だった。

会見のフル生配信番組が上位占める
●AbemaTV、2019年ニュースチャンネル視聴者数トップ10番組

 ニュースチャンネルで今年最も見られた番組トップ10(右の表)を見ると、7月20日に開かれた吉本興業のタレント2人の会見を筆頭に、有名タレントの結婚会見や吉本の岡本昭彦社長の会見が上位につけた。ZOZO前社長の前澤友作氏の退任会見もランクインするなど、会見の冒頭から終了までノーカットで流す「フル生配信」がコンテンツとして視聴者に支持されているのが分かる。

 なぜここまで関心が高いのか。大きくいって消費者の「3つの欲求」がある。生配信が当然となった時代、謝罪会見を開く企業や個人は、そうした欲求を踏まえた対応が欠かせない。

 「3つの欲求」とは何か。まず登壇者の言葉のすべてを聞きたいという欲求だ。ニュース番組で使われる映像は長くて1分程度。時間が限られている以上、印象的な場面が中心となる。

 もちろん既存のテレビでも生放送は可能だ。だが、大きな災害やニュース価値が高い速報などでない限り、決定済みの番組編成を大きく変えることは難しい。会見の一部をワイドショーなどの情報番組内で中継することはできても、すべては放送できない。

 その一方で、どのような文脈で、どのような表情で登壇者が話したのかを知りたいというニーズが高まっている。テレビ朝日社員でアベマTVニュースを担当する水野篤担当部長は「視聴者は『キメ』の一言の裏にある1時間を求めている」と語る。

 ネットテレビは編成の変更がききやすい。生配信で既存テレビ局を出し抜いたのが18年の日本大学のアメリカンフットボール部で起きた悪質タックル問題の会見だ。学生が会見して自らの言葉で謝罪し、その後大学側の監督とコーチが会見を開いた。大学側の会見は午後8時からとテレビのゴールデンタイムに始まったことで多くのテレビ局は中継できなかった。アベマは生で会見をすべて放送。学生と大学それぞれの主張をすべて聞いたうえで判断したいという視聴者のニーズに応えた。

続きを読む 2/3 会見中にSNSで反論も

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この記事はシリーズ「謝罪の流儀 令和元年 平成までの謝り方は通用しない」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。