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社会が求める謝罪の水準に到達しないと、企業は大きな痛手を被るようになった。ネット上の言論空間が発達し、情報流出の経路が多様化したことが、こうした傾向を助長している。2019年の謝罪会見でも「世間の肌感覚とのズレ」が騒動の火種となるケースが目立った。

(写真=共同通信)

 サービス開始当初、クレジットカードの不正利用の対応に追われたPayPayは、金銭補償など個別の被害者への対応を徹底する一方で、謝罪はSNSなどで済ませた。メディアを前に経営陣が頭を下げるという従来の“様式美”とは異なる動きは、ネット時代の新たな謝罪の流儀かもしれない。

 ただし、これはある種の賭けでもある。事態が自らの想定通りに運ぶとは限らないからだ。世間の反応を読み違えたり、あずかり知らぬ事実が後から明らかになったりすると、ダメージはかえって大きくなってしまう。

 その典型的な例が7月に発覚したリクナビのケースだろう。就職情報サイト、リクナビを運営するリクルートキャリア(東京・千代田)は、学生から得たデータを使って内定辞退予測率を計算し、本人の同意を得ることなく企業に販売していたケースがあったことが明らかになった。予測率が採否判定に使われていたのではないかと、学生の間で猛烈な批判が巻き起こる。

 それに対して、リクルートキャリアがどういう対応を取ったのか。まず順を追って見ていこう。

 内定辞退率予測サービス「リクナビDMPフォロー」をめぐる問題が報道されたのは8月1日。同社は「学生の皆さまや、企業・大学の関係者など各所にご心配、ご迷惑をおかけしておりますこと、誠に申し訳ございません」と、その日の夜にプレスリリースを発表。個人情報の第三者提供がどのような仕組みで行われているか、分かりやすい説明方法を確立するまで、サービスは一時休止するとした。この時点では、サービスの仕組みそのものに問題はないと会社側は認識していた。

 ところが、その後の社内調査で、不適切な個人情報の第三者提供があったことが判明。5日に再びプレスリリースを出し、そうした経緯の説明と、7983人の学生から情報提供の同意を得られていなかったことを明らかにした。対応として、対象学生に向けておわびのメールをすることや、リクナビDMPフォローは廃止することを発表文に盛り込んだ。

 同社にとって事態はさらに悪化する。8月26日に政府の個人情報保護委員会が、個人情報を扱う企業として適切な体制整備を求めるべく、勧告を出したのだ。それを受け、緊急で同日夜に小林大三社長、浅野和之執行役員が謝罪会見を開くこととなった。問題発覚から1カ月近い時間が経過していた。

 一連の同社の対応を、専門家たちはどう見ているのか。危機管理広報支援の大森朝日事務所の大森朝日代表は「プレスリリースを出すタイミングや説明内容はおおむね適切だった」と話す。

日経ビジネス2019年12月16日号 38~45ページより