不正利用が発覚したセブンペイ問題。会社は素早く記者会見を開いたが、騒ぎはかえって拡大した。一方、同様の問題を起こしたPayPayは、会見をせず、SNSを通じた謝罪で乗り切った。影響力を増すソーシャルメディアへの配慮が不足していたことが、セブンペイつまずきのもととなった。

「これじゃ謝罪会見の開き損だ」。記者会見を終えた後、セブン&アイ・ホールディングスグループの担当者はため息交じりにこうつぶやいた。
2019年7月4日、セブン&アイのグループ会社であるセブン・ペイの経営陣は神妙な面持ちで謝罪会見に臨んだ。3日前に鳴り物入りで始めたスマートフォン(スマホ)決済サービス「7pay(セブンペイ)」で大規模な不正利用が発生したためだ。後に被害人数は約800人、被害金額は総額約3800万円に上ったことが明らかになった。
「セブンペイをご利用なさっているお客様、および関係者の皆様に多大なるご心配、ご迷惑をおかけしたことを深くおわび申し上げます」
会見に臨んだセブン・ペイの小林強社長、セブン-イレブン・ジャパンの宮地正敏執行役員、セブン&アイホールディングスの清水健執行役員の3人は会見の冒頭、深々と約4秒間、頭を下げた。待ってましたと言わんばかりに報道陣のカメラのシャッター音が鳴り響き、おびただしい数のフラッシュが彼らに襲いかかる。
様式美とは言い過ぎだろうか。日本では見慣れた会見風景だ。不祥事が起きたら迅速に記者会見を開き、頭を下げて謝罪の姿勢を見せる。経緯を説明し、現時点で把握している情報を包み隠さず公開する。それこそがこれまで不祥事やトラブルを起こした企業の取るべき対応とされてきた。セブンペイの会見も、この“王道”にのっとって粛々と進められた。
だが、セブンペイはこの会見を機に、まさかの開始から3カ月でサービス終了に追い込まれる事態に陥ることになる。きっかけは報道陣から投げかけられたこの質問だった。
「(スマホ決済では)ユーザー登録時に2段階認証をしているサービスがほとんどだが、セブンペイでそれをしていなかった理由は?」
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