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「100年後も強い企業」になるための鉄則は、「100年後に(も)売れる商品を作ること」だ。100年後には地球の人口は110億人を突破、平均気温も2.6~4.8度上昇する見通し。そんな人口爆発・温暖化時代に需要が急増する商品を予測することは、さほど難しくない。

(写真=PIXTA)

「環境変化に対応し進化する」「伝統を守り磨く」──。明らかに、かつてのような威力を失いつつある2つの「老舗の法則」。ではもう、企業が寿命を延ばすための鉄則などないのかと言えば、そんなことはない。例えば「100年後の2120年に存続する企業になるための方法」を提示することは簡単だ。それはずばり、次のようなものだ。

▶(今は市場がないが)100年後に売れる商品・サービスを提供する
▶(今も売れていて)100年後も売れる商品・サービスを提供する

 当たり前と言えば当たり前。だが単純明快にして、絶対的な法則と言えないだろうか。「それはそうだろうけど、明日のことさえ分からないのに、100年後に需要が増える商品・サービスを今から予測するなんて不可能」。こう思う方は少なくないはずだ。

逆立ちしても分からぬ株価

 確かに、最新の金融工学をもってしても、例えば明日の株価を正確に知ることはできない。

 人類で最初にその事実を指摘したといわれているのはフランスの数学者ルイ・バチャリエという人物で、今から約120年前の1900年に「株価が上がるか下がるかの確率はともに50%で、株価予想の的中率はコインを投げて表か裏かを当てる確率(50%)と変わらない」と主張した。

 続いて、34年には米スタンフォード大学の統計学者ホルブルック・ワーキングが「株式市場の価格の変化率はランダムウオーク(酔っ払いの千鳥足)と同じ」と分析。50年代には、英国の統計学者モーリス・ケンドールが「株式相場は、『偶然の悪魔』がランダムに数字を今週の価格に加算して来週の価格を決めている」と結論付けた。

 その後も様々な学者が様々な研究を発表し、60年代までには「株価の正確な予想は不可能(的中率はコイン投げ程度)」であることが学術的に確立されている。

 だが一方で、専門家の中には、同じ未来展望でも、予想する年までの期間が極端に長いもの、例えば50年、100年先という長期の予想であれば、当たる確率は高まると考える人が少なくない。英「エコノミスト」編集部が2012年にまとめた『2050年の世界』は、「奇妙な話だが、2050年を予測することは、来週や来年を予測するよりもたやすい」と断言した。

(写真=4点:PIXTA)

 明日の株価は分からなくても、100年先の予測は不可能ではない──。そんな主張の正しさを証明する一冊の本がある。今から約100年前の1920(大正9)年に、政教社が出版した『百年後の日本』がそれだ。

 哲学者の三宅雪嶺が主宰した『日本及日本人』という雑誌の春季増刊号として企画されたもので、学者や教育者、政治家ら当時の知識人350人余りが100年後、つまり今の日本の姿を予想し寄稿している。

 350人の予想は様々で、中には「100年後の予測など難しい」という内容で寄稿する人も多くいた。『古寺巡礼』『風土』などの著作で知られる哲学者、和辻哲郎もその一人で、「百年後の日本がどうなるかは私には解りません」と回答。未来の日本を語ることは「ばかばかしいからよします」としている。

日経ビジネス2019年12月9日号 34~41ページより