
就任から5年目に入った八郷隆弘社長が、せきを切ったように改革を打ち始めた。系列部品3社の日立製作所系との統合に加え、技術研究所にも大ナタを振るう。いずれもこれまで手が付けられていなかった「聖域」だ。

「従来のケイレツでは次世代車の開発競争を勝ち抜けない」──。
八郷隆弘社長は覚悟を決めた。ホンダの系列部品メーカーの研究開発費は中核企業のケーヒンでも年250億円ほど。主要5社でトヨタグループと比較すると、その規模は10分の1以下だ。開発力の差はあまりに大きく、他グループとの総合力が開いていくことは自明になっていた。
●トヨタとホンダの系列部品会社の体力比較

サプライヤー再編はホンダの長年の課題だった。PART1で紹介した英国工場のトップを務めたこともある八郷氏は、クルマの潮流に関して周囲に思われている以上に敏感で、ソフトウエアや電機の技術が重要になることを見越していた。ただ八郷氏の社長就任前の14年、ホンダは電子制御システム子会社を日本電産に売却していた。
八郷体制でメーンターゲットとしたのは、燃料供給システムやハイブリッド車の電子制御ユニットといった基幹部品を生産するケーヒンだ。「最も大事なサプライヤー」(ホンダ幹部)を強化すべく、パナソニックとの統合を試みた。
当時、パナソニックは主力事業を住宅と自動車向けに振り向けようとしていた。15年にはスペインの自動車用ミラー大手、フィコサ・インターナショナルに出資。ホンダという大手顧客がついてくる自動車部品事業は、新たな成長の柱を作るためにも喉から手が出るほど欲しかったに違いない。しかし、両社の議論は深まらなかった。
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