「官製キャッシュレス祭り」の綻びが早くも露呈する日本。それでもキャッシュレス決済の利点を無視することはできない。事業者も消費者もキャッシュレスの恩恵を引き出すにはどうすればいいのか。

国内に約1100店舗を構えるイタリア料理チェーン、サイゼリヤ。8割以上の店では現金しか受け付けていないことで知られる。QRコード決済はおろか、クレジットカードも使えない。国を挙げて推進する「キャッシュレス祭り」も、サイゼリヤにとってはどこ吹く風。堀埜一成社長が理由を語り始めた。

別に、キャッシュレスを未来永劫やらないわけではありません。最終的には乗っかるんですよ。でも、究極の後出しじゃんけんをするつもりなんです。
というのは、我々はハード(端末)の開発速度を見ている。1000店以上あると、ハードのコストがバカにならない。クレジットや電子マネーだけでなく、PayPay(ペイペイ)が入ってきたりと、端末自体今後どう変わっていくか分からない。だからそのハードに金を使いたくないのです。
実際、今回の助成でもハードが問題になっていたでしょう。製造が間に合わなくて。だから仮に今、うちの1000店に入れてって言っても入らない。そろそろやるかな、という気はしてたんですけど、今じゃない、となりました。
実は堀埜社長には「日本はまだ現金社会だ」と確信させた出来事があった。
米アマゾン・ドット・コムがやってきたんですよ。(キャッシュレスを)急いでやらなくてよかった、と思ったね。
サイゼリヤは今年7月、お釣りをアマゾンで使えるギフト券で渡すキャンペーンを都内2店舗で始めた。お釣りの額に2%分を上乗せした金額をアマゾンのネット通販や動画配信サービスで使えるようにするものだ。この話はアマゾン側から持ち掛けられた。
一気にキャッシュレスが進んだ中国と違って、アマゾンは日本はキャッシュ信仰が続く前提なんですね。キャッシュレスでいろいろなトラブルもあったし、確信したんちゃうかな。やっぱり日本は現金だと。
アマゾンの狙いは、現金を入り口にして、アマゾンのキャッシュレスに持っていくことでしょう。うちは単なるチャージ機です(笑)。彼らはほんとに頭がいい。よくここまで考えると思いますよ。まだ2店舗だから分からないけど、これから何をやってくれるか楽しみなんです。彼らが見る日本像が分かるわけですから。
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