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本誌は今回、1万人を対象にした独自調査を実施、キャッシュレス決済の動向を探った。浮き彫りになったのは、官製普及策の限界だ。付け焼き刃の政策で現場は混乱。その間隙を縫うようにソフトバンクグループのPayPayが勢力図を一気に塗り替えていた。

キャッシュレス決済普及率47都道府県ランキング
47都道府県キャッシュレス決済普及率ランキング2020調査概要
調査期間:2019年10月10~14日
調査企画:日経BP(日経ビジネス、日経クロストレンド)
調査委託先:マクロミル
調査方法:マクロミルの調査モニターを対象にしたインターネット調査・スクリーニングを主目的とした事前調査と、QRコード決済認知者を対象とした本調査の2段階で実施した。予備調査は全国47都道府県から均等に回答者を集め(212または213人)、合計で1万人から回答を得た。その上で、都道府県と年代の分布状況が日本の人口と同様になるようにウエイトバック処理をして集計した。本調査は、予備調査でQRコード決済サービスを認知している人を対象に実施。全国47都道府県から均等に回答者を集め(103人)、合計で4841人から回答を得た。予備調査と同様のウエイトバック処理を実施した。

 キャッシュレスで決済した人を対象に、税込み価格の最大5%分を還元する「ポイント還元制度」。2019年10月1日、消費税10%導入に合わせて開始されたこの制度は当初、海外と比べて低迷する国内のキャッシュレス決済比率の押し上げに大きく寄与すると期待を集めた。

 だが、プロローグで紹介したように、決して、日本中で導入機運が高まっているわけではない。それは「日経ビジネス」と「日経クロストレンド」が共同で1万人を対象に実施した「47都道府県キャッシュレス決済普及率ランキング2020」調査でも裏付けられた(調査結果の詳細は日経ビジネス電子版で公開予定)。

 同調査ではポイント還元制度によってキャッシュレス決済の金額が「増えた」と答えた人は33.3%にとどまった。61.6%は従前と「変わらない」。ポイント還元によるキャッシュレス利用の後押し効果は限定的だったと言える。

都心と地方の差が鮮明に

 キャッシュレス決済利用において、都心と地方の格差が広がっていることも調査で明らかになった。都道府県別で見たキャッシュレス決済比率のデータを見ると、広域関東圏(1都10県)は高いキャッシュレス決済比率を誇っているが、地方は現金決済が主流であることが見て取れる。特に、九州各県はランキングの下位に名を連ねているのが実情だ。

 例外的存在が全国3位につけている沖縄県だ。2003年に全日本空輸(ANA)とビットワレット(現楽天Edy)が提携。移動手段を飛行機に頼る県民にとって、マイレージを効率的にためられる手段が魅力的に映り、県下で加盟店、利用者数ともに広がった。もともとあったこうした素地に、訪日外国人の増加も相まってキャッシュレス決済環境の整備が進んでいる。

 キャッシュレス決済は利用可能な店舗と、利用できる手段を持つ消費者がそろって初めて実現する。ポイント還元制度で消費者、事業者ともに刺激しようとした「官製キャッシュレス祭り」の効果はいまひとつ。日本ではこのままキャッシュレス決済が一向に進まないのだろうか。

 唯一と言っていい光明が、度重なる「祭り」を自ら開いて一気に勢力図を塗り替えた民間事業者がいることだ。ソフトバンクとヤフーが出資して18年10月に開始した「PayPay」だ。

日経ビジネス2019年11月18日号 36~41ページより