
貿易摩擦から始まった米中の対立は、時を追うごとに激しさを増している。中国との関係を断つ「デカップリング戦略」が進めば、世界は分断されかねない。日本は経済的にも技術的にも対等以上になった中国とどう対峙すればいいのか。
「香港と共に立ち上がろう」
10月4日、全米プロバスケットボール協会(NBA)ヒューストン・ロケッツのゼネラルマネジャー、ダリル・モーリー氏は、デモ活動が続く香港情勢を受けて、ツイッターにこう投稿した。投稿への反応は、中国からの猛抗議という形ですぐに返ってきた。
中国ではバスケットボールの人気が高く、NBAにとっても中国は大切な市場だ。特に2002年から約10年間にわたって中国人選手の姚明氏がプレーしたロケッツに対する支持は厚い。それだけにモーリー氏の発言は、中国人ファンの怒りを買った。

NBAはすぐさま、あくまでも個人の意見でNBAは関与していないと謝罪したが、中国側は収まらない。中国国営テレビはロケッツの試合の放送を中止。アリババ集団はロケッツ関連グッズの販売を取りやめた。ロケッツの損失は数十億円に上るとの試算もある。
その一方で、米国内からはNBAの対応について弱腰との批判が上がっている。NBAは米中の間で板挟みになっている状況だ。
急速に高まった技術力を背景に、世界への影響力を増している中国。それに対し、危機感を募らせる米国。両者の対立は単なる経済摩擦を越え、様々な分野でこれまでにはなかったあつれきを生むほど激しさを増している。
1997年に英国から中国に返還されながらも、一国二制度の下で民主主義・資本主義の要素を色濃く残してきた香港でのデモ活動の長期化が、両国の対立をさらに複雑なものにしている。
その影響は企業にも及ぶ。米アップルは、香港のデモ隊が利用しているアプリを取り下げたとしてデモ参加者らから非難を浴びた。一方、米宝飾品のティファニーは、右目を隠した女性の写真を使用した広告が香港での抗議活動を支持しているように見えると中国で問題視され、取り下げを余儀なくされた。
日本企業にとっても対岸の火事ではない。香港では吉野家や元気寿司を運営するフランチャイズ企業が親中的だとして、抗議活動のターゲットとなり店舗が破壊されている。

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