デジタル活用と従業員の意欲を引き出す仕組みで、現場力を底上げする米国勢。地道なカイゼン活動で品質や生産性の向上を急ぐアジア勢。さびつく日本の現場力は復権できるのか。磨けば光る「日本流」を突き詰めるしかない。

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<span class="fontBold">オムロンでは生産部門と技術部門が共同開発して「The GEMBA」と呼ぶ自動化を推進</span>(写真=山本 尚侍)
オムロンでは生産部門と技術部門が共同開発して「The GEMBA」と呼ぶ自動化を推進(写真=山本 尚侍)

 「生産性はこの2年で1割上がった」。オムロンの国内最大の製造拠点である草津事業所(滋賀県草津市)の小泉秀明工場長は、産業機械に使う制御機器の製造現場の取り組みに胸を張る。

 これまでの地道な「カイゼン」では不可能だった大幅な生産性向上を実現できたのは、自動化の徹底にかじを切ったからに他ならない。例えば今年8月に導入されたのが、組み立てられた製品に不備がないかをチェックする自動検査装置。これまで人の目に頼っていた66の検査項目を自動で判別する。

 先端にカメラを取り付けたアーム型ロボットが自由自在に動きながら検査対象物を様々な角度から120カ所以上撮影。得られた複数の写真を合成して、「型番のラベルの表示の正しさ」「傷は許容(規定)範囲内か否か」「隙間はないか」などを見極めていく。

 検査スピードは格段に上がった。人の検査では、対象となる制御機器を手で動かしながらチェックしていたため、検査時間は1回当たり110秒。自動検査装置なら70秒まで短縮される。何よりも人の目に頼ると、どうしても不具合を見落とすリスクがある。だが、機械は見逃さない。検査漏れはほぼゼロになった。

 少子高齢化で人手不足が避けられないニッポンの現場。機械に仕事を任せる自動化で生産性を高めようという企業は多いはずだ。ただ、自動化へと製造現場を駆り立てる理由は人手不足だけではない。

 小泉工場長は言う。「製造する機器の性能や精度が高まったことで、検査を含めた製造工程も複雑化している。製造現場だけで今までのように『カイゼン』に取り組むだけでは勝てない」

 自動化の徹底へ、2017年11月に製造部門主導で始めたのが「The GEMBA」と名付けた取り組み。The Global Empowered Manufacturing By Automationの英語の頭文字で「現場」を示しながら、文字通り、自動化によって製造力を高める狙いを込めた。