
DMG森精機社長
1985年京都大学卒業、伊藤忠商事に入社。93年に森精機製作所(現DMG森精機)に移り、94年取締役、99年から現職。2009年には独ギルデマイスターと資本業務提携を締結。(写真=森田 直希)
日本の製造業の現場力が生かしにくくなっていると感じます。強みが生きる大量生産品の需要が減少しているからです。日本は同じ製品を大量に、かつ安定した品質で作るのが得意。それは人種的に均一な人の集まりであることが大きく影響していたと思います。
一方で、日本は均一な人が多いが故に、異端児が少なく、個人主義のような考えが薄く、とんがった発想は良しとされない。だから、自動車でいうと、イタリアの高級スポーツカーメーカーのフェラーリのような企業もなかなか出てきません。航空機のような少量多品種の商品の作り込みが弱いのです。
私が警戒しているのは開発の現場力の低下です。ドイツと比べると、日本は2割ほど劣っていると感じます。
そもそも日本は開発面で不利な条件に置かれています。新しい材料や加工方法などは、海外で生まれることが多いのですが、日本に持ち込もうとすると、どうしても言語の壁が立ちはだかる。
私たちが手掛ける工作機械では、新しい製品のアイデアは顧客との対話から生まれることが多々あります。しかし、今では顧客の工場の多くが海外に移転してしまい、そもそも国内に顧客の現場がありません。これではなかなか画期的なアイデアも出てきません。私たちのように、開発力のある欧州企業と一緒になるのは一つの打開策となるでしょう。
一方、製造の現場力を見ると、日本とドイツが世界的に見ても素晴らしい水準にある。日本には技能検定や社内の道場、ドイツには優れた技術を後世に残すための職業能力を認定する「マイスター制度」があります。技術を伝承する仕組みが整っています。
現場力を維持するには、時代に合わせた変化も必要になります。技術は10年おきに変わる。例えば、今なら(あらゆるものがネットにつながる)IoTやAI(人工知能) などへの対応が求められます。変化に合わせて伝統技術も使い方を見直すことが必要です。世界一流のシェフは最新の調理器具を使うもの。同じやり方でいいはずがありません。(談)
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