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次の50年も日本が世界で存在感を発揮し続けるのは容易ではない。人口減少や新興国の台頭に打ち勝ち、再成長するには、旧来の成功モデルに縛られてはならない。強みを磨き抜き、世界の変化を見極める力がこれまで以上に求められる。

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 日本のGDP(国内総生産)は現在の世界第3位から第5位に転落する──。

 シンクタンクの日本経済研究センター(東京・千代田)は6月、2060年までの主要7カ国のGDPの推移をシミュレーションした長期経済予測をまとめた。それによれば、日本のGDPは、20年代半ばにインドに抜かれ、40年代半ばにはドイツに抜かれる。

このままでは米中との差が開き日本は5位に
●主要7カ国のGDP長期予測 (2014年ドル換算)
出所:日本経済研究センター 長期経済予測第二次報告(19年6月17日)

 ドイツは欧州連合(EU)各国との障壁が低いため人材や資金が流入しやすく、産業のデジタル化にも積極的。インドは60年まで人口が増え続け、若い世代が成長エンジンになる。

 中国は高い成長率で先進国を追い上げ、30年代前半には経済規模で米国をいったん抜くものの、30年ごろから人口が減り始めて伸び悩む。国内企業の優遇政策など内向きの制度も足かせとなり、60年までに米国が抜き返す。それでも世界の2大超大国は競り合いながら経済成長を続ける。

 日本はどうか。このままでは60年のGDPは18年に比べて4.2%減るとみる。少子高齢化で人口は約1億人にまで減少し、現在4分の1を占めている65歳以上の人が国民の4割近くに達する。その結果、18年には約4倍だった米国とのGDPの差は、60年には約9倍にまで広がってしまう。

 ただし、いくつかのシナリオがある。現在、日本が先進各国に比べて立ち遅れているデータ活用を加速させ、デジタル型サービスを創出できればプラス成長を維持することも可能だと分析する。いずれにせよ日本が生産年齢人口の減少に打ち勝ち、成長を続けるためには大胆な産業構造の転換が必要になる。そしてそれこそが経営の役割だ。

「準備なき経営」に明日はない

 「10年、20年先に世の中がどう変わるのかを検討しそれをベースに中期計画を立てている。地球環境や資源、人口、あるいは貧困の問題とか。今起きている問題にはあまり影響されない」

 東レの日覺昭廣社長はこう言う。同社の売上高はここ10年で約1兆円伸び、2兆3888億円(19年3月期)に達した。大企業、特に製造業の中では珍しくなった成長企業といえる。

 経営の最大のリスクは予想外の大きな障害が突然、襲ってくることだろう。40年先、日本のGDPが5位に落ちるという見通しは、言ってみれば、何の予測もなく変化に向かう「準備なき経営」の果ての姿ではないか。

 東レと同じ化学大手、米デュポンには「100年委員会」と呼ばれる会議があり、100年後の社会がどうなるかを幹部が専門家とともに真剣に検討している。目の前の課題をクリアすることも重要だが、長期視点を持ち続けなければ新たな創造はできない。

 投資を抑え、人件費を削り、売上高は伸びなくても利益が上がればよしとする「3低経営」では、本物の競争力をつけることはできない。「ゴーン改革」で一度は高収益企業になったと評価された日産が再び苦境に遭遇しているのは、その表れかもしれない。

日経ビジネス2019年10月7日号 51~55ページより