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20兆円を超えるファンドで世界の成長企業に投資し、AI革命の先頭を狙う。時代の先を読み、実行してきた経営者は今、日本の課題と希望をどう見ているのか。自らの後悔と野望を重ね合わせ、90分間語り尽くした。

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(聞き手は 本誌編集長 東 昌樹)

縮小均衡は縮小しかない ラストチャンスを逃すな(写真=村田 和聡)
PROFILE

孫 正義[そん・まさよし]氏
ソフトバンクグループ会長兼社長
1957年8月、佐賀県鳥栖市生まれ。62歳。81年、日本ソフトバンク設立。96年ヤフー社長、2006年ボーダフォン(現ソフトバンク)社長、13年米スプリント会長に就任。17年、ソフトバンク・ビジョン・ファンドを設立し、世界のAI関連企業に投資する。同年から現職。

日本の現状をどう見ていますか。

 非常にまずい。一番の問題は、戦前戦後や幕末に比べて起業家精神が薄れてしまっていることです。「小さくても美しければいい」と言い出したら事業は終わり。縮小均衡というのは縮小しかないのです。

 世界は急激に動いています。それなのに、若いビジネスマンは日本の外に打って出るという意識が薄れてしまっている。草食系になってしまった。それでは活力になりません。背景には、教育や思想的な問題があると思います。

 1980年代や90年代、日本は電子立国と言われ技術で世界を引っ張る勢いがありましたが、今は部品や自動車を除いて世界トップの分野がなくなりました。日本経済はこの30年間、ほぼ成長ゼロです。小さな村の小さな平和でもいいのかもしれませんが、世界から忘れられた島国になってしまいます。

なぜ日本人はハングリーになれないと思いますか。満たされてしまったのでしょうか。

 一時、日本のビジネスマンは「働き過ぎ」と非難されるぐらい頑張っていました。世界のそうした声を聞いてしまい、今は働かないことが美徳のような雰囲気になっています。

 株式市場もバブル崩壊で「借金=悪」「投資=悪」のようなイメージが広がりました。競争意欲を持つこと自体に疲弊し、こうした精神構造が社会全体を覆ってしまいました。

 2000年前後のネットバブルでは若い経営者が脚光を浴び、「お金があれば何でも買える」という発言が世間の総バッシングを浴びました。成長産業に若者が入りそうだったのに、みんなが萎縮してしまった。

日経ビジネス2019年10月7日号 26~31ページより