デジタル技術を駆使した「信用のインフラ」を構築し、領土と国民から成る物理的な国家とは別の階層で、世界中の人々が参加できる仮想国家をつくる──。エストニアがそんな取り組みを推し進める背景には、この国ならではの歴史的経緯がある。
エストニアは外部勢力の移り変わりに大きな影響を受けてきた。12世紀ごろまでキリスト教世界の外側にあったが、デンマークに続いてローマ・カトリック教会のドイツ騎士団が進出。その後17世紀にはスウェーデン領となり、およそ100年後の1721年に今度は帝政ロシアに組み込まれる。ロシア革命でソ連が誕生したのをきっかけに1918年に独立を宣言するが、第2次世界大戦中、再びソ連に編入された。
現在の独立を手にしたのは、ソ連が崩壊した91年のことだ。それ以降もロシアとの緊張関係は続いており、エストニア政府は2007年に受けた大規模なサイバー攻撃にもロシアが関与したとみている。北大西洋条約機構(NATO)は08年、「サイバー防衛協力センター」をタリン市内に設置した。
西欧、北欧、そしてロシアの結節点に位置する地理的要因もあって、強国に翻弄されてきたエストニア。それが物理的な領土だけでなく、電子空間も含めた国の在り方を模索することにつながっている。
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