国の通貨発行、どこまで認めるか
MMTがここまで注目を浴びた理由の一つに、米民主党左派、アレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員がMMTに支持を表明したことが挙げられる。2018年の米中間選挙において29歳で下院議員に当選、最年少下院議員になった政治家である。

看板政策は化石エネルギーから再生可能エネルギーへの転換を目指すグリーン・ニューディール政策。それ以外にも、米国の若者をむしばむ学費ローンの棒引きや国民皆保険制度の導入などを主張しており、1期目の議員ながら革新的な政策を支持する民主党左派を代表する存在になった。米政界に現れた新星が支持したことで、一躍、MMTは議論の表舞台に浮上したのだ。
MMTという異端の理論が耳目を集める“土壌”も整いつつあった。米国における債務の肥大化だ。下のグラフにあるように、米国の連邦債務はGDP比でリーマン・ショック前の35%台から約78%に増加した。MMTを採用しようがしまいが、今後はさらなる悪化が見込まれている。
●米政府債務残高の推移(GDP比)

出所:米議会予算局(CBO)
(写真=アフロ)
米国のインフラ老朽化は深刻で、年金やメディケア(高齢者および障害者向けの公的医療保険)など社会保障関連の給付金は増大しつつある。財政支出の余地が限られる中、財政赤字を正当化できる理論としてMMTが持ち出されているという面もある。
だが、財政赤字の拡大も国の通貨発行権に対する信認があってこそ。その信認に依存した通貨発行が野放図に膨らむことになれば、国家の過大な権限に批判的な人々が国を見捨てかねない。
事実、米国には巨額財政支出を肯定するような議論を苦々しく見る一団がいる。カナダに面した北東部ニューハンプシャー州で独自の“国づくり”を進めるフリー・ステート・プロジェクト(FSP)に参加する面々である。
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