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ブロックチェーン、QRコードなどの技術進化で、日本でもデジタル通貨が次々誕生している。現在は日本円で価値を保証するものがほとんどだが、円から「独立」することはないのか。海外では民間のデジタル通貨に政府が対抗するような動きも浮上、せめぎ合いが始まっている。

①~③岐阜県高山市で開かれた地域通貨国際会議。世界各国から研究者が集まり、互いの研究成果を発表。日本各地の取り組みを紹介するブースも④高山市などで使える地域通貨「さるぼぼコイン」を体験する参加者。「電子化されて簡単」との声⑤ 地域通貨「エネポ」は間伐材を活用してつくられる(写真=5点:RAMICS 2019 組織委員会提供)

 暑さもまだ残る9月中旬、観光地としても名高い岐阜県高山市に、世界21カ国、100人の地域通貨研究者が集まった。市民文化会館を開放してこしらえた会議場は熱気であふれ返っている。フィンランドの大学で地域通貨を研究するマーカス・ペッツ氏は「日本の民間企業が発行する地域通貨の話が面白かった。研究のヒントになる」と話す。

 地域通貨の研究機関「RAMICS」が隔年で開催する地域通貨国際会議の一幕だ。5回目の今年、日本で初めて開催された。今、海外ではESG活動に地域通貨を取り入れようとする動きがあちこちで起こっており、各国の地域通貨の取り組みについて議論された。

 会議では高山市を地盤とする飛騨信用組合が、スマートフォンとQRコードを利用して2017年から運用している地域通貨「さるぼぼコイン」の紹介や、森林の間伐作業のお礼として高山市のNPOが発行する地域通貨「エネポ」の見学会が開かれた。

 フェイスブックのリブラは決して遠い国の話ではない。地域通貨が活況となっている日本でも、いずれ似たような出来事が起きてもおかしくない。

 国内ではすでにデジタル技術を使った通貨は続々と生まれ、広く使われている。銀行以外の事業者はもちろん、中には高山市のように固定資産税や軽自動車税などの支払いに地域通貨を受け入れるなど、積極的に活用している自治体もある。

 デジタル通貨は資金決済法上では、現金をチャージして使う電子マネー、プリペイドカード、ギフトカードといった前払式支払手段、銀行以外の業者が提供する決済・送金サービス、仮想通貨──のいずれかに分類される(次ページ下の表)。01年にJR東日本が非接触型ICカードを使った出改札システム「Suica(スイカ)」を導入して以降、日本人にとって身近な存在になった。ここ10年で電子マネー決済金額は約7倍の5兆円超(17年)まで増加している。

日本ではスマホ決済サービスが次々登場し、ユーザー獲得競争を繰り広げている(写真=つのだよしお/アフロ)

 電子マネーのみならず、スマートフォンを使ったQRコードやバーコード決済も増えた。「LINEペイ」「ペイペイ」「メルペイ」など、新たなスマホ決済サービスが続々と登場し、“覇権”争いを繰り広げている。決済金額の20%相当をポイントや電子マネーの形で利用者に還元するといったユーザー獲得合戦が盛んになっている。

 利便性の向上も普及を後押しする。銀行などの金融機関より低い送金コストに目を付け、少額送金や個人間送金など、これまで埋もれていた送金需要が顕在化している。LINEペイの池田憲彦プロダクト室室長は「店舗などでの決済額の方がまだ大きいが、個人間送金も認知度の向上とともに増えてきた」と話す。

日経ビジネス2019年9月30日号 34~37ページより