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3人の幹部が順番に経営の執行に当たる「輪番会長」制に、従業員持ち株制……。世界に事業を広げる巨大企業を支えるのは、異形とも言えるファーウェイの経営システムだ。成長のために、あらゆるものを咀嚼する姿勢には日本企業も学ぶべき点がある。

米国の禁輸措置を受けたファーウェイは8月、独自開発のOSを披露した

 「鴻蒙(ハーモニー)OSはいつでもアンドロイドOSと入れ替えられる」

 華為技術(ファーウェイ)でスマートフォン事業を率いる余承東(リチャード・ユー)氏は8月9日、広東省東莞市の松山湖キャンパスで開催された開発者イベント「ファーウェイ・デベロッパー・カンファレンス2019」で、こう高らかに宣言した。

 ハーモニーOSはファーウェイが自社で独自開発したスマホ用のOS(基本ソフト)である。鴻蒙(ホンモン)は中国語で、天地がまだ別れず混沌とした状態を意味する。英語名は「調和」を示すハーモニーを当てた。

 今年5月、通信業界はパニック状態に陥った。米国が「エンティティーリスト」にファーウェイを加えたからだ。同リストに入った企業には、米国製品はもちろんのこと、米国に由来する技術などを使った製品も事実上輸出が不可能になる。

 ファーウェイ製スマホは高精細カメラなどの機能面の魅力と価格とのバランスの良さから、米アップルのiPhoneなどをしのぐ勢いで世界での販売が伸びていた。だが、米国のエンティティーリストにファーウェイが加わったことで状況は一変した。

 日本ではNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクがファーウェイ製の一部端末の取り扱いを一時停止した。海外でも同様の動きが相次いだことから、ファーウェイの先行きを危ぶむ報道があふれた。

 ファーウェイにとって、最大のリスクは米グーグルが提供する「アンドロイド」が利用できなくなることだ。ファーウェイ製スマホのユーザーはセキュリティーなどが不十分な状態を強いられる可能性もある。そのようなスマホを買うユーザーはいないだろう。

 今のスマホメーカーにとって、「明日からアンドロイドが使えない」と言われる以上の悪夢は考えられない。だが、ファーウェイは最悪の事態に先んじて手を打っていた。それがハーモニーOSだ。

ある日起こる「まさか」に備える

 ハーモニーOSは元来、同社がスマートウォッチやスマートテレビなどIoT機器のOSとして開発していたものだ。だが、スマートフォンOSとしてもアンドロイド以上の性能があり、アンドロイド用アプリも移行できるという。一方で余氏は「アンドロイドの供給が受けられる限り、OSは切り替えない」とも強調した。

 実はファーウェイの名前が米国のエンティティーリストに組み込まれる2カ月ほど前、余氏は既にこう発言している。

 「独自OSを準備している。アンドロイドを使えなくなった場合、それに代わるプランBは既にある」

日経ビジネス2019年9月9日号 38~43ページより