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米国による制裁で今や世界でもっとも有名な中国企業となった華為技術(ファーウェイ)。共産党との距離やセキュリティーリスクが気になるが、その企業としての力は無視できない。製品や研究開発、営業、財務といった観点から分析すると、驚異の実力が浮かび上がってきた。

中国東莞市にあるファーウェイの「松山湖キャンパス」。120万m2の広大な敷地の中に欧州の古い街並みが再現されている

 数百年前から立ち並んでいるような趣のある建物に美しい池、アルプスの山を登るかのような列車──。

 この場所が中国だと言っても、あるいは信じてもらえないかもしれない。だがここは中国南部の広東省東莞市。ドイツのハイデルベルク、イタリアのベローナ、スペインのグラナダといった欧州の街の様子が見事に再現されており、まるでテーマパークのようだ。

 だが、ここには来訪者に愛嬌(あいきょう)を振りまく着ぐるみはいない。欧州を模した城や街並みの内側には、近代的なオフィスや研究開発施設がある。

 この「街」の主こそが、今、米国政府の標的になっている中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)である。同社が100億元(約1600億円)を投じて建設している「松山湖キャンパス」だ。敷地面積は約120万m2と、東京ディズニーランドと東京ディズニーシーの合計(100万m2)よりも広い。それぞれの街区には駅が設けられており、赤いミニ電車で移動するようになっている。設計は日本の日建設計だ。

 敷地の中心にある池には、予想できない出来事を示す「ブラックスワン(黒鳥)」が3羽、優雅に泳いでいた。高確率でトラブルを引き起こすが軽視されてしまいがちな問題を示す「グレーリノ(灰色のサイ)」の像もある。

 松山湖キャンパスの建設が始まったのは2014年。既に使用が始まっているが、今も建設は続いている。全体が完成した暁には、研究者を中心に約3万人が働くことになるという。

 米アップルや米グーグルなど、世界の大手IT企業は開発者たちの創造性を引き出すための環境作りに余念がない。だが、その中でもファーウェイのスケールは群を抜く。

米国と対立しながら業績好調

アップルやサムスンしのぐ急成長
●1000億ドル級企業までの年数
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出所:各社決算資料などから本誌作成

 それを可能にしているのが、ファーウェイの急速な成長だ。1987年に広東省深圳市で創業してから、わずか31年。売上高は1000億ドル(約10兆5000億円)を突破した。そのスピードは韓国のサムスン電子やアップルを上回る。2018年の売上高は前年比19.5%増の7210億元(約12兆円)だった。

 米国政府はファーウェイを「中国政府とつながりが深い」企業と位置付け、事実上の禁輸措置など厳しい対応を取っている。中国政府や共産党の支配下にあるとの指摘について、ファーウェイは一貫して否定しているが、安全保障もからむ問題だけに正確な事実を把握することは不可能に近い。

 だが、1つだけはっきりしていることがある。最強の国を敵に回しながら、ファーウェイの成長は続いていることだ。米国の措置による影響が懸念された19年1~6月期業績は、売上高で前年同期比23.2%増の4013億元、純利益率は8.7%と好調を維持した。

 さらに次世代通信規格「5G」の技術において、同社は「他社よりも1~2年は進んでいる」(日本の大手キャリア幹部)とされる。はたして同社の実力はどれほどのものなのか。製品、研究開発、営業、財務に分けて分析していく。

日経ビジネス2019年9月9日号 26~33ページより