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不動産に投資する会社員は以前から存在するが、長らく続く超低金利環境でその数は増殖している。マンション1部屋というつつましい投資家から、飲食店やホテル、軍用地を買う投資家まで多士済々。金融庁の指導によって過度な信用供与は問題視されているが、気にせず買い進む人々の素顔は。

 大規模緩和を背景に不動産に流れ込む投資マネー。その中には会社員など個人の資金も含まれる。いわゆる“サラリーマン大家”による投資である。

 「老後資金2000万円不足」問題が象徴しているように、現役時代からの資産形成は待ったなし。その中で、安定的な収入を見込める商品として不動産に目をつける人は少なくない。

 もちろん、風向きは変わっている。シェアハウスのサブリース事業が破綻、オーナーへの賃料が未払いになった「かぼちゃの馬車」事件とスルガ銀行による不正融資が明るみに出たことで、会社員向けの過度な信用供与が問題視された。金融庁の指導によって地銀や信金・信組の融資姿勢は転換している。

 それでもどこ吹く風とばかりに買い進む人々は存在する。そんなすご腕サラリーマン投資家の手法を見ていこう。

 若者に抜群の人気を誇る東京・三軒茶屋。8月中旬のある日、大通り沿いのカフェに行くと、約束の男性は店の前で待っていた。河津桜生氏(仮名)。大手金融機関の融資担当という顔を持つサラリーマン大家だ。つい最近まで、このカフェのオーナーだったという。

 河津氏の投資実績はサラリーマン投資家の域を超えている。所有物件から上がる賃料はおよそ月2000万円。銀行への融資返済などを差し引いた利益は500万~600万円だ。現在、50を超える物件を所有している。

50以上の物件に投資する河津桜生氏(仮名)。大手金融機関の融資担当という顔を持つ

 河津氏が不動産投資を始めたのはリーマン・ショックが起きて間もない2009年。不動産会社の倒産が相次ぎ、不動産価格がつるべ落としとなっていた頃だ。土地の値段よりも価格が低いアパートが売りに出ていることを知り、またとない好機と購入に踏み切った。

 そんな彼が物件投資のアクセルを踏み始めたのは金融環境が落ち着き始めた11年以降。東日本大震災の影響もあって不動産はまだ割安な状態だったが、地銀を中心に投資用不動産に資金をつける銀行が出始めた頃だ。

 そして、13年に異次元緩和が始まり、低金利が常態化すると、貸出先を求める銀行はサラリーマン大家向けに融資の蛇口を開き始める。そこから河津氏は一気に物件取得を進めていった。

日経ビジネス2019年9月2日号 32~35ページより