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東京と家賃が変わらない離島、中国人が買い進める老舗商店街、暴力団が立ち退いた元遊郭跡地──。金融緩和であふれたマネーは、訪日客に沸くリゾート地や過小評価されていた地域に流入している。リターンを求める投資マネーに翻弄される地域をのぞいてみよう。

宮古島と隣の伊良部島を結ぶ伊良部大橋。宮古島では美しい海を目玉にしたリゾート開発が進む(写真=アフロ)

 日銀の異次元緩和であふれたマネーはあらゆる金融商品の価格を押し上げている。端的なのが不動産市場だ。大都市やリゾート地では物件価格が上昇。調達金利の低さも相まって、東京都心の大規模オフィスビルの期待利回りは3%台まで低下(価格は上昇)している。

 その中には、経済活動の拡大やインバウンド(訪日外国人客)の増加など実需をベースにしたものもある。だが、全国を巡ると、「バブル」と形容されてもおかしくないような動きも出ている。

 沖縄本島の南西290kmに浮かぶ宮古島。港近くの繁華街からクルマを走らせること20分余り、牛の鳴き声が響く集落に、青色のコンテナ群が突如として現れる。周囲から浮いている“鉄箱”が住宅ということに驚くが、それ以上に島民の噂の種になっているのは家賃。記者が取材した時点の賃料は専有面積わずか10.53m2で月9万円だった。

 珊瑚礁が隆起してできた宮古島には川がなく、周辺には土砂が流れ込まない透明度の高い海が広がる。“宮古ブルー”とも称される美しい海を目玉に、リゾート開発が相次いでいる。今年3月、宮古島と橋でつながる下地島にみやこ下地島空港ターミナルがオープンし、観光客の増加が見込まれるためだ。

 とりわけ鼻息が荒いのが、南側の海岸線に「シギラリゾート」を展開しているユニマットグループの南西楽園リゾートだ。現在の部屋数は約840室。それを2020年度までに1500室まで増やすという。宮古島では大手資本のリゾートホテルだけでなく、個人によるペンションや民泊経営も増加している。

 もっとも、リゾート開発ラッシュは人口5万5000人足らずの島に不釣り合いな建設需要を生み出した。その表れが、冒頭のコンテナハウスである。

住宅不足に対応するためのコンテナハウス。10m2ほどの広さで募集賃料は月9万円だった

 これまで、宮古島の建設需要は主に島内の作業員で消化してきたが、ここ数年の建設ラッシュを島の人間だけでさばくことはできず、全国から建設作業員を集めることに。だが、島には作業員が寝泊まりする住居が十分にない。それで施工が容易なコンテナハウスが建設されるようになったのだ。「異常事態」。地元ゼネコン、共和産業で建築部長を務める下地和夫氏は天を仰ぐ。

 作業員の流入とホテル関連の従業員の増加で、賃貸物件の家賃は上昇の一途。従来、新築ワンルームは月4万~5万円だったが、現在は10万円と、一般の若者が借りられる水準ではない。

日経ビジネス2019年9月2日号 26~31ページより