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外国人に依存しながらも、「単純労働では受け入れない」との建前だった日本。実態と制度の乖離が、技能実習生の問題などでゆがみとなって表面化している。外国人を「雇用の調整弁」と見なすだけの国には、いずれ誰もやってこなくなる。

日系フィリピン人の勤務時間を減らしたシャープの三重工場(右)。左はそれに対する抗議デモ(写真=左・提供:ユニオンみえ、右:毎日新聞社/アフロ)

 「ずっと働けると思っていたのに、突然、勤務時間を半分にすると言われたの。フィリピンにいる2人の子供にも今まで通りの仕送りができなくなったわ」

 日系フィリピン人のガルシエ・ラケルさん(44)は今年3月末、契約していた人材派遣会社から、翌月から勤務時間を半減する旨を告げられた。職場は液晶パネルを生産するシャープの三重工場(三重県多気町)。他のアルバイトを入れようにも、勤務シフトが決まるのはぎりぎりで仕事の掛け持ちは厳しい。「辞めていった仲間からは、会社から『ありがとう』の一言もなかったと聞いた」と悔しさをにじませる。

 日本人の祖母をもつラケルさんは2003年に来日。自動車部品工場や鮮魚店などで働き、12年にシャープの工場で働き始めた。同工場で働いていた母から誘われたのがきっかけだった。弟や息子、娘も同じ工場で働いており、家族全員が勤務時間の削減を迫られた。

 今回、勤務時間削減の対象となったのは日系フィリピン人約150人。ラケルさんによると、同じ職場で働く日本人は派遣会社が異なり、残業もしているという。

雇うのは3次下請け

3次下請けが直接契約
●外国人労働者の多重下請け構造

 昨年末には、同じ三重県にあるシャープの亀山工場で外国人約3000人を含む約4000人が1年ほどかけて事実上の雇い止めになっていたことが発覚した。主に個人が加入する労働組合「ユニオンみえ」などによると、亀山工場では3次下請けの派遣会社を通じて外国人約3000人を雇用していた。シャープが直接契約する1次下請けの下に2次、3次と連なる形だ。

 こうした多層構造は三重工場も同じだ。3次下請けの会社は実態は1社だが、社名の異なる複数の会社を登記しているとみられる。ある外国人労働者は「1~2カ月で契約する会社が変わり、そのたびにサインをした」と証言する。雇用期間を短くすれば社会保険に加入させたり有給休暇を取得させたりする必要がなくなる。言葉の問題などで正社員に就くのが難しい外国人の弱みに付け込んだ手法ともいえる。

 かつて製造する液晶テレビが「世界の亀山」として一世を風靡した亀山工場は04年に稼働を始めた。ディスプレー産業の集積地を狙う三重県の「クリスタルバレー構想」にシャープの町田勝彦社長(当時)が賛同。各都市から誘致を受けたが、三重県と亀山市からの総額135億円の補助金拠出も決め手となった。

日経ビジネス2019年8月19日号 38~41ページより