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優秀な外国人材の争奪戦は激しさを増すばかりだ。明確なキャリアパスを提示してチャンスを与え、フォローも忘れない。そうして不満や不安を解消しなければ、外国人材に見放される時代が迫っている。

KUURAKU GROUP初の外国人社員で、現在は銀座の店舗の店長を務めるネパール出身のビジャヤさん

 「いらっしゃいませ!」。東京・銀座の路地に面した地下店舗、香ばしい煙に包まれた店内に威勢のいい掛け声が響く。声の主は日本人ではない。焼き鳥店チェーンなどを国内外で展開する「KUURAKU GROUP」(千葉市)の直営店、「福みみ銀座店」で働く社員・アルバイトの大半は外国人だ。

 この店舗で働く計14人のうち、日本人は副店長ら4人だけ。店長を務めるのはネパール出身のアチャリャ・ビジャヤさん(28)。2014年に新卒で入った同社の外国人正社員第1号だ。

 ビジャヤさんはネパール中部のポカラ出身。「日本で英語を使う仕事に携わりたい」と19歳で来日し、都内の専門学校ではビジネス通訳を学んだ。もともとは空港職員など旅行関係の仕事に興味があったが、日本食を海外展開する事業に携われればと希望をもってKUURAKUへの入社を決めた。

 入社前の研修を兼ねた実店舗でのアルバイトで、開店前から自主的に鶏肉の串刺し作業を手伝うなど意欲の高さを評価されたビジャヤさん。渋谷の店舗などを経て配属された福みみ新宿店では店長代理に抜てき。リーダーシップが評価されてMVP社員に選ばれるなど、日本人以上の働きをみせた。

「将来は母国で」が原動力

 18年1月から店長を務める銀座店の売り上げは社内でも一、二を争う重要な店舗で、客の6割は外国人だ。外国人スタッフも多いが「彼らがどの程度まで日本語を理解していて、どう指導すればいいか。ビジャヤはそれを分かっている」と海外事業本部執行役を務める広浜成二郎氏は語る。

 厚生労働省の統計によると、食物調理や接客・給仕といった外食系の有効求人倍率(パート除く)はいずれも約3倍と人手不足が深刻だ。同社も「企業合同説明会でも大学生なら5人と話せればいい方だった」(広浜氏)。

 そうした状況でなぜKUURAKUがビジャヤさんのような人材を獲得でき、その後の活躍につなげられているのか。

 それは同社が、ビジャヤさんの「将来は故郷で日本食を広めるなど事業を起こしてみたい」という長期目標につながるようなキャリアパスを用意しているからだ。

海外赴任や店長を経ていずれは母国に
●KUURAKUグループの外国人材のキャリアアップ(ビジャヤさんの例)
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 現場で頭角を現したビジャヤさんに、会社は入社わずか3年目の16年にスリランカ赴任を命じた。現地には1年近く滞在し、食材調達や現地社員の育成を指揮した。こうした実績や経験を踏まえ、KUURAKUでは「いずれ帰国しても店舗展開などで協力していければ」(広浜氏)と期待を込める。

日経ビジネス2019年8月19日号 32~37ページより