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居住地から結婚、生活様式まで、大卒者と非大卒者の人生モデルが大きく異なる日本。同じ国に暮らしながら、日々の生活で両者には溝が生まれがちだ。そんな学歴による社会分断は、様々な社会問題の温床になっている恐れがある。

(写真=朝日新聞社)

 「アメリカファースト」の保護主義を支持するトランプ派と、それを排外主義と批判する反トランプ派が対立する米国。「ブレグジット(EUからの離脱)」を巡り国論が2つに割れる英国。マクロン大統領の新自由主義的経済政策に国民が「黄色いベスト」を着て反発するフランス……。世界の主要国で進む“社会の分断”は、2019年の夏を迎えても収束する気配を見せない。

 「ラストベルト(錆びついた地域)」と呼ばれるミシガン、オハイオなど米中西・北東部地域。点在する荒れ果てた工場跡地と、近年新設されたバイオテクノロジーなどの研究機関のコントラストは、米国分断の象徴だ。

 かつて国内製造業の中心だったこの地では多くの白人中流層が普通に暮らしていた。ただ、1970年代以降のグローバル化で、彼らの仕事の多くは安価な労働力を抱える他国民に奪われた。

 国や州は、研究開発や金融など非製造業の誘致・強化でラストベルトの再生を図り、2000年代以降に一部地域は復興を果たした。だが、地域を支えた白人の多くは蚊帳の外に置かれた。最先端の非製造業分野に製造業のスキルしかない彼らの居場所はない。

 グローバル化と仕事の高度化に追い詰められ貧困化した白人の元・中流層が、国内雇用を優先するトランプ支持派の中心にいる。しかし、彼らの絶望や怒りは西海岸の先端研究機関やハリウッド、GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)で働く人々には届かず、トランプ派の主張は「白人至上主義」にしか映らない。これが米国の分断の社会構造だ。

 ここ10年ほど、格差の拡大や貧困層の出現が指摘される日本ではあるが、今のところは街を歩いても、社会の分断を明確に意識させられる光景に出くわす機会は少ない。地方、都市部を問わず、ほぼ同水準のインフラが整備され、駅前には似た店舗が立ち並び、似た服装の人が行き交う。

大卒と非大卒で二分する社会

 だがこの国にも、それこそラストベルトの荒廃が始まるずっと以前から目には見えない境界が存在し、今も社会を分断し続けている。「学歴分断線」だ。

 買い物やレジャーに出掛ければ、当然のことながら、大勢の人にすれ違う。そのすれ違った人のうち、「何割が大卒者で何割が非大卒者か」などと想像したことはあるだろうか。

 厚生労働省のデータを基にした一般社団法人スクール・トゥ・ワークの調査「非大卒人材データ集」によると、25~29歳の非大卒者は45%(ここでは短大卒・高専卒の学歴も大卒、それ以外を非大卒とする)。大学院卒者・大卒者は54%。街で若い日本人2人とすれ違えば、1人は大卒、もう一人は非大卒。これが現実というわけだ。

日経ビジネス2019年8月12日号 26~29ページより