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高額医薬品が続々と登場する中で、日本は「医療後進国」に転落する可能性すらある。医療分野の専門家は、まずは医療保険財政を健全にするため、医療費の無駄を省け、と説く。

医薬品医療機器レギュラトリー サイエンス財団理事長 土井 脩氏
高齢者の1割負担はおかしい
元厚生省大臣官房審議官で、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の理事などを歴任。(写真=中山 博敬)

 薬価下げに頼って医療財源を捻出することには限界があります。医療制度全体で無駄を省くことが重要です。医療費の自己負担は基本的に3割ですが、根本的にこの仕組みから見直してもよいと思います。風邪の治療といった「軽医療」の負担率は上げてよいのではないでしょうか。

 確かに風邪は万病のもとともいわれ、どんなに軽い症状でも病院に行くべきだという主張はあります。しかし、こうした部分でも合計すると膨大な医療費がかかっていることは事実です。

 ドラッグストアで買える一般用医薬品と同じ成分の薬を保険で安く買うために病院が使われているなら、患者の負担額を引き上げるなど、何かしらの方法でバランスを取る必要があるでしょう。

 特に後期高齢者は1割負担で済みますが、「お年寄りだから負担率を下げる」というのは本来であればおかしな話です。働けないという理由で医療費負担を下げるのなら、別の仕組みで救済すべきです。

 過去に承認された薬の有用性の再評価も進めるべきでしょう。国から承認をされているものの、効果が本当にあるのか疑わしい薬は昔からありました。結果として、それらの薬は保険の対象から外されました。現在でも効き目がはっきりしないのに漫然と使われている薬はあります。こうした薬の再評価が必要です。

 製薬業界の競争力を高める上でできることもあります。例えば、医薬品の承認審査の見直し。世界で誕生する新薬の7割程度は、米国が初めて有効性を評価しています。日本は主に欧米が評価した薬を後から審査しているのですが、新たに日本人の臨床試験のデータを求めることがほとんどです。今の創薬はグローバル規模で進められています。新薬の開発段階から情報共有をしておくなど、日本も欧米と協力しながら画期的な新薬を取り込んでいくべきでしょう。

 臨床試験のコスト負担は製薬企業にとって重くなっています。こうした負担が重なれば、新薬の開発といった産業競争力を阻害する可能性があります。