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定番というと、中身もデザインも変わらないものが支持され続けるという印象があるかもしれない。しかし多くの定番は、幾度も改良を施し、ファンを広げてロングセラーに成長している。時には気づかれないように機能や味を改善し、競合の追随をかわす。変わり続ける動きを探った。

 「アタック」や「キュキュット」「ビオレuボディウォッシュ」などジャンルトップ商品を次々に生んできた花王。定番ポートフォリオをかたちづくり、年間売上高1兆5000億円という日用品の巨大メーカーに成長した。

 こうした製品群のなかでも「社会の変化によって新たに生じたニーズに的確に対応し、定番になった」(早稲田大学の恩藏直人教授)と評価されているのが、フローリング用掃除用具の先駆け、クイックルワイパーだ。フローリングの家が増える住環境の変化をとらえて1994年に誕生し、現在もシェア1位。当初から爆発的に売れ、その後も、「スイスイ簡単」と軽快なテレビコマーシャルを大量に放映して主婦以外の層にも商品を浸透させていった。

掃除の不満、解決を目指す

 開発当初から携わるホームケア事業部の柳田浩幸開発マネジャーは「掃除に関する不満をすべて解決するようにしたかった」と話す。電気掃除機は重く、レンタルモップは油剤が広がってしまい、雑巾はかがむのが苦痛。軽くて丈夫なアルミパイプと360度回転してピアノの下にも入る薄さのヘッド部を組み合わせたクイックルワイパーは、これらの悩みを一気に解消した。

 製品の長所は見れば分かるから、技術的には他社が模倣できないわけではない。本来なら製品ライフサイクルによって「衰退期」を迎えていたかもしれない。しかし、花王は大小の改良を積み重ねることで、追随しようとするメーカーの一歩先を走り続けた。

ごみの捕集力を高め、使い勝手をよくした
●クイックルワイパーのパッケージと構造の変遷
 

 97年にはクッション面に凹凸を付け、畳の汚れも取りやすくした。2004年にはグリップを滑りにくい形状に変え、柄の接続部分は緩みやすかったねじ式からジョイントロック式に変更。ヘッド部分も湾曲させ、シート全体を使って、ごみを捕集できるようにしている。

 11年の全面改良では、クッション面をうず状の構造に変え、汚れをかき取る無数の突起物を付けた。さらに狭い隙間に入るようにヘッドの厚さを4割薄くした。このときの試作品は数十種類に及んだという。このほかにも細かな変更は数知れずある。

 これだけ変えても柳田氏は「常に工夫を続ける」とさらなる改良に意欲を示す。「少しでも満足してもらえないことがあると、ブランドへの信用は一気になくなる」と危機感は強い。高シェアを崩さないという大命題を守るための奮闘が続いている。

日経ビジネス2019年7月22日号 30~35ページより