技術や競合状況、取引先など、ビジネスに環境変化はつきものだ。時の流れに対応して、何を自前で持てば競争力が高まるか。その判断が問われている。

6月半ば、都内にある研修施設ではちょっと変わった研修が開かれていた。集まったのはコニカミノルタの30歳手前の若手社員13人。1泊2日の日程で、任天堂のゲーム機「ファミリーコンピュータ」向けのゲームを自作することがお題だ。

実はこれ、コニカミノルタがIoT人材を育てるための研修だという。あらゆるモノがネットにつながるIoT関連の研修に、発売から30年以上が過ぎ、本体プラスチックがやや黄色く変色したゲーム機がどう役立つのか。研修を担当する情報機器事業開発本部の亀井俊智係長によると「シンプルであるが故にしっかりとプログラムを組まないとゲームとして成立しない」ことがIoTの世界で使う組み込みソフト作りに通じるという。
こんな研修などを通じて、コニカミノルタはIoTや急速に普及するAI(人工知能)に対応できる自前の人材育成を急ピッチで進めている。まずは2019年度までに国内外で500人の人材を育て、次の3年で1000人規模に倍増させる方針だ。3000人の技術者の3分の1がIoT関連のサービスに関わるようになる。
「いざ動こうとしても専門家を自前で持たないと動けない」。IoTやAIの人材が高額の報酬で転職する時代となる中、同社が社員を教育して抱えようとする理由について、江口俊哉執行役はこう説明する。
そもそもIoT自体は価値を生むものではない。問題は機器がネットにつながった先にある。例えば、介護施設に置かれたセンサーを考えてみる。画像認識技術が強みのコニカミノルタは、介護施設の個室に画像センサーを設置することを介護施設に提案している。高齢者の部屋の画像データから室内の状況を分析し、介護士が最適な対応を取れるようにするシステムだ。
そのシステムを使えば室内で高齢者が倒れたことを把握できる。そして介護士に伝えることまではどの企業でもできるだろう。だが、コニカミノルタが考えるのはその先の価値だ。各居室の状況を一括で把握し、スマートフォン(スマホ)などで通知、介護記録もスマホで書けるようにして介護士の負担を減らす。これにより多くの高齢者を施設に迎え入れ、採算をいかに改善するかまでを一つのシステムとして考える。
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