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事業環境の急速な変化で、「持つ、持たない」の常識が変わり始めている。同じ業種でも考え方は分かれる。対照的なアプローチを取る企業の動きを追った。

野村証券
少ない大型店で勝負(写真=Kodansha/アフロ)

 店を持つか、持たないか。メガバンクが大型店舗の統廃合やATM設置戦略を見直したのは記憶に新しい。同じ金融機関で、より深刻なのが証券会社だ。1990年代にインターネット証券が産声を上げたが、既存の証券会社はリアル店舗を主戦場とする対面営業中心のビジネスモデルを大きく変えることなく、ここまできてしまった。個人金融資産の多くを握る主要顧客の高齢者は対面営業にとどまったからだ。

 だが、それも限界に近づいている。最大手の野村証券を抱える野村ホールディングスの2019年3月期の最終損益は1000億円強の赤字。国内営業部門において株式などの売買手数料が減ったのが響いた。2番手の大和証券グループ本社も減収減益だった。

 この危機感が、駅前一等地に店を構える支店網の見直しにつながっているが、両社の路線は対照的だ。下のグラフが示すように野村証券は店舗を減らしているのに対し、大和証券は増やしている。

店舗数で大和証券が逆転する
●店舗数の推移
注:各社資料を基に作成。約3年後はイメージ

 19年4月、野村証券は3年以内に全国156ある支店の2割を削減すると発表した。見直しの過程で浮上したのは「実際に野村証券に資産を預けている顧客はあまり来店していない」という実態だった。顧客の来店目的のほとんどが、各支店主催のセミナーで、店舗の存在が効果的な資産導入増に結びついているとは限らなかった。

 支店の姿はどうあるべきなのか。野村証券が出した答えは、数を減らし、残す店舗を「サービスをワンストップで受けられる専門知識を持ったスタッフが集まる場」にすることだった。サービスの密度を高める代わりに支店数を減らし「持たない」方向に向かうわけだ。同じ場所に専門性の高いスタッフを束ねた方が、顧客の要望に応えやすいという考え方が背景にある。

 それに合わせて組織も変える。顧客の属性別に人員配置を組み直し、法人・富裕層に向けた営業の強化を表明している。

 「会社オーナーの方の関心は、資産運用はもちろんのこと、経営や事業戦略、財務、税金と多岐にわたる。そのため総合的なソリューションが提供できる体制を構築しなければならない」。1店舗当たりの密度を高める狙いを森田敏夫・野村証券社長はこう語る。

日経ビジネス2019年7月8日号 36~43ページより