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市場縮小で在庫の山に押しつぶされかけたラジコンカーメーカーが立ち直りつつある。戦略的に在庫に向き合うことで突破口を開いた。「持たない」ことだけが正解の時代ではなくなっている。

4年ぶりにおもちゃショーに出展した京商の渡邉克美社長。(写真=陶山 勉)

 在庫は悪である──。ビジネスに携わる者なら一度は耳にしたことのあるフレーズだろう。部品という半製品を抱える製造業はもちろん、商品在庫を持つ小売業でも、在庫が経営を圧迫するとの解説はよく聞かれる。そんな考えを一変させた経営者がいる。

 「在庫を全部二束三文で処分しようと覚悟していた」

資金繰りの改善で新商品の開発も。

 ラジコン(RC)カー業界2位、京商(神奈川県厚木市)の渡邉克美社長は、赤字を垂れ流していた2年前までのつらい時期をこう振り返る。1963年創業の同社は業界首位のタミヤ(静岡市)とともに80年代のRCカーブームで成長したが、その後、少子化・人口減による市場停滞に直面。2008年にリーマン・ショックによる業績低迷で自動車業界がモータースポーツから距離を置くようになると、同社の売り上げはさらに悪化した。最盛期に150億円あった年間売上高は30億円まで落ち込んだ。

 そんな中、のしかかったのが在庫だ。特にRCカーの場合、顧客が求めるパーツ交換の在庫も持つ必要がある。1つのRCカーに使うパーツは多い商品で300に及ぶ。京商では過去に販売した商品のパーツはすべて、数年分の需要を見越し保管していた。パーツも含めた全商品の在庫は約2万9000種類、倉庫2棟分。管理コストだけで年1000万円かかっていた。

 赤字続きで、経営はいよいよ危なくなる。新商品を開発する資金を捻出できず「KYOSHO EGG」と呼ぶRCカー初心者向けのブランドも香港の玩具会社に売却した。お金にならない在庫は処分するしかないと思っていた。

 復活への転機は18年4月に訪れた。新生銀行系の投資会社や米コンサルティング会社の日本法人、ゴードン・ブラザーズ・ジャパンなどの支援を受け再建を目指すこととなった。

整理する前の倉庫の様子。在庫の状況が正確に把握できていなかった

 京商はまず、積み上がった在庫の見直しに着手する。ゴードン社は米国で、在庫を評価し、資金を融通するビジネスを展開している。その経験からアパレルなど、小売業の製品在庫を適正に保ち、売れないものは別の販売チャネルにて市場価格で売却するノウハウを培ってきた。

 どんなものがどれくらいの値段で、どのような販路で売れるのか。動産評価に関するデータを持つゴードン社の助言を基に、「現在も販売可能なもの」「顧客サービスの維持に必要なもの」「滞留する可能性の高いもの」などの基準で5つに分類。自社で残す在庫と、処分・売却する在庫に分けた。

日経ビジネス2019年7月8日号 34~35ページより