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ITを使って勢力を拡大する中国の国家戦略に乗り、BATは経済圏を海外に広げている──。米国を中心にそう主張する脅威論が勢いを増し、世界が分断されかねない状況だ。日本企業には中国IT企業がもたらす果実とリスクを冷静に見極める眼力が求められる。

マレーシアの首都クアラルンプールではアリババの都市管理システムを導入する予定だ(写真=shutterstock)

 中国・北京で4月下旬に開かれた「一帯一路フォーラム」。海外の要人を前に習近平国家主席は切り出した。「第4次産業革命に乗り遅れないためにも『デジタル一帯一路』を推し進める」

 一帯一路は、海外で鉄道や港湾などのインフラを建設し中国と世界をつなぐ国家戦略。その一環でIoTや次世代通信「5G」などのデジタル技術で地域をつなぐのが「デジタル一帯一路」だ。

ルワンダに現れた馬雲氏

 米中間の経済・安全保障問題を調査する米議会の委員会は、デジタル一帯一路のプロジェクトを3つに分類する。

 まず通信インフラの整備。華為技術(ファーウェイ)や中興通訊(ZTE)などがその役割を担う。次にEC(電子商取引)プラットフォームの構築、最後がデジタル技術で都市を管理する「スマートシティー」で、両者の推進役として中国アリババ集団の名前を挙げる。

 昨年10月、アリババの馬雲(ジャック・マー)会長はルワンダの首都キガリにいた。アフリカの東部に位置する同国で導入が決まった「eWTP」の立ち上げを祝うためだ。eWTPは世界電子商取引プラットフォームの略で、ネットを通じて商取引したい中小企業向けにアリババが運営している。

 式典で馬氏はカガメ大統領らを前に「アフリカから世界へ商品を売れるようになる」と強調した。先行してルワンダ産コーヒー豆をアリババの通販サイトで買えるようにしたところ、中国で瞬く間に売り切れたという。

アリババのECプラットフォームで販売するルワンダのコーヒー豆を手にした同社の馬雲会長(左)と同国のカガメ大統領(右)(写真=VCG/Getty Images)

 アリババは巨大な消費市場、中国への販路を提供することでeWTPを世界に広めようとしている。すでにマレーシアやベルギー政府とも組んだ。

 馬氏はアフリカ初のeWTP導入国としてルワンダと組んだ理由を次のように説明した。「『ネットの接続環境が悪く、物流網が整っておらず、電子決済が普及していないのになぜルワンダなんだ』と周囲から言われた。私は言い返した。『だからこそルワンダなんだ』、と」

 アリババは物流や決済などのインフラが未発達だった中国で、従来の発展段階を飛び越える「リープフロッグ」によって急成長した。それを他国で再現しようというわけだ。馬氏は「世界の8割の国はインフラが不十分な発展途上国。私たちはこれらの国を支援していく」と力を込める。

日経ビジネス2019年7月1日号 44~47ページより