会社を興した創業家は社会に貢献したと言える。しかし、会社は育てばもはや公器だ。私物化や独善といったファミリー特有の罠に陥らないためにはどうしたらいいのだろうか。

 ファミリービジネスは多くの強みがある一方、特有の弱点もある。特に深刻になりやすいのは家族を巡る問題だ。下にまとめた表は近年、創業家が絡んでメディアをにぎわせた、いわゆるお家騒動。ファミリーが一定の株を保有したり、経営を担っていたりすることに起因する問題は枚挙にいとまがない。慶応義塾大学の奥村昭博名誉教授は「本来の企業価値に関係ないファミリーの内紛が多い」と話す。

親族の争いはイメージ悪化につながる
●最近のファミリービジネスの事件簿

 こうしたトラブルは、家族内部のマネジメントの失敗と、経営陣と創業家の対立という2つに大別される。前者は家族内の統制が利かず、メディアを通じて罵り合ったり、社内で不仲が公然のものになってしまうケースだ。

 ファミリーのなかには経営に直接かかわる人とかかわらない人がいる。株を持つ人と持たない人の違いもある。世代を重ねるごとに親子や兄弟だけでなく、夫や妻、いとこなどファミリーのメンバーも増えてくる。それぞれに立場が違い、ファミリービジネスに対する考え方も異なるだろう。同床異夢の共同体をマネジメントするのは容易でない。

目立つ親子の争い

 そのなかで、時に発生するのが親子の争いだ。会社の運営を巡る意見が異なると、互いをよく知るだけに「なぜ我が子は理解しないのか」「なぜ父は分かってくれないのか」と思いがちで、妥協点が見いだしにくくなる。神戸大学の加護野忠男特命教授は「お金より大切なものがあるのがファミリー。損得勘定だけに還元できない分、対立が深刻化しやすい。兄弟対立は親が調停したり、場合によっては会社を割る選択もある」と分析している。

 大塚家具の父と娘の対立では、経営方針をめぐる意見の相違が発端となり、2014年にぎくしゃくした関係が表面化した。最終的に創業者で父親の大塚勝久氏は新たに匠大塚(東京・中央)を15年に設立した。

 一方、今年4月、娘で現大塚家具社長の大塚久美子氏が、勝久氏に業界団体名誉会長に就任するよう要請した。この間に大塚家具の業績が急落しており、親子の関係改善によるイメージアップが欠かせないと判断したようだ。勝久氏は「元気な姿を見て安心した」と喜んだが、今は別会社。久美子氏の申し出を断っており、完全な和解には至っていないようだ。

 ファミリー内のマネジメントが不十分な結果、本来守るべきモラルや基本ルールがないがしろにされることがある。公私混同が起きたり、ファミリーに対する身びいきといった課題が浮上してくる。スルガ銀行がその典型例だ。創業家の関連企業向けに不適切な融資をしていた問題が明るみに出て、同行は旧経営陣らに対して損害賠償を求めている。

続きを読む 2/4 ファミリーと経営陣が対立

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