同族経営という言葉からは、どこか後ろ向きで、非効率な空気さえ漂う。しかし実態は通説の逆のようだ。ファミリー企業の長所をデータから読み解いた。

ファミリービジネスは非ファミリーに比べて好業績という実態が近年、研究者の調べで明らかになっている。静岡県立大学の落合康裕准教授らが資産を有効活用して利益に結びつけているかを示すROA(総資産利益率)に着目して上場企業を調査したところ、2017年3月までの7期すべてでファミリービジネスが非ファミリーを上回った。
17年3月までの1年間に決算を迎えた企業では、ファミリービジネスは6.6%で、非ファミリーの5.4%を1.2ポイント上回った。16年3月ではファミリービジネスが6.8%で、非ファミリーは5.3%だった。落合准教授は「ファミリービジネスはムダな資産を保有しない傾向にあるようだ」と分析する。
●上場企業のファミリービジネス、非ファミリービジネスの業績比較

ファミリービジネスは創業家などの出身者が上位10位株主もしくは出身の取締役が過去を含め2人以上いることから定義
名古屋商科大学の太宰北斗専任講師の別の調査では、ROAはファミリーの持ち株比率が2割超の会社で特に高い。帝国データバンク総合研究所の分析では、経営者交代の翌年のROAは非ファミリーでは低下するが、ファミリーでは上昇している。
落合准教授らの調査によると、収益性の高さを示すROE(自己資本利益率)は年によって違いがあるが、17年3月ではファミリービジネスの7.5%に対して、非ファミリーは7.1%。16年も7.1%、5.7%となった。
ファミリー優位が鮮明なことについて、慶応義塾大学の奥村昭博名誉教授は、イノベーションをめぐる姿勢を例示して理由を説明する。新たなチャレンジは成果が出るまで社内の反発を招きやすく、イノベーションは企業規模が大きくなるほど実現が難しくなる。だが、ファミリービジネスは創業家が強いリーダーシップを持つため社内がまとまりやすく、「実はイノベーションと相性がいい」(奥村名誉教授)とみており、その結果が業績の高さとなって表れているという。
コーセー、社長が買収けん引
そんな強みを発揮しているファミリービジネスの好例が、1948年創業の化粧品大手、コーセーだ。小林一俊氏は2007年に、祖父、父、そして叔父に続く4代目の社長に就任した。業績は好調で、19年3月期のROAは13%、ROEは19%となっている。
近年の好業績は14年に買収した米化粧品子会社タルトが支える。1999年設立のタルトは化粧品に天然由来成分を配合し、色調豊かで華やかなパッケージを採用。メーキャップ化粧品を主力に売上高を伸ばす。

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