かつて遅れた経営形態と見なされた同族企業の研究が学術レベルで進んでいる。日本では上場企業の5割以上が同族経営で、日本の成長のカギを握る。日本の「ファミリービジネス」は本当に強いのか。

 西日本で10店舗以上を展開していた地場スーパーマーケットが4年前に自己破産した一因は創業家の振舞いにあった。裁判所に提出した資料によると、トップを務めた創業一族の出身者が「高額な報酬や経費を受領」し、「会社の負担で不必要な高級車やマンションを取得」していた。1970年代に法人化し、破綻が近づくまでファミリーがトップを担ったが、大手資本との競争激化に抗えなかった。

 創業一族が会社を私物化し、従業員たちがそれをとがめられない。そんな問題が破綻の背景にはあった。同族経営には特有の緩さが生じてしまうことがあるともいわれる。地方に本社を置く有力な研究開発型企業として知られ、2011年に会社更生法の適用を申請した林原(岡山市、現在は長瀬産業子会社)は同族企業の代表例でもあった。元社長は著書で「(経理を担当する)弟は、私が頼めば研究費をすぐに出してくれた」と述懐している。

業績で非ファミリーを上回る

 一族での富の独占、お家騒動、能力不足の息子の世襲──。日本では「同族企業」に負のイメージがあり、必ずしもいいものと捉えられていなかった。米国では鉄鋼王、アンドリュー・カーネギーが富を子が有効に使いこなせるとは限らないと考え、遺産相続に反対だったという。古くからの米国の学説でも、企業は成長する過程で所有と経営の分離が進み、トップも専門経営者に代わるなど非同族に進化するという考えが示されていた。この考えは近年まで根付き、所有と経営が分離しないままのファミリービジネスは古い統治形態とされていた。

<span class="fontBold">ジャスティン・クレイグ氏。出身のオーストラリアでもボンド大でファミリービジネスの講座を持つ</span>(写真=栗原 克己)
ジャスティン・クレイグ氏。出身のオーストラリアでもボンド大でファミリービジネスの講座を持つ(写真=栗原 克己)

 ところが近年の研究では違う評価も出ている。米豪で教壇に立つ米ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院のジャスティン・クレイグ客員教授によると、S&P500のような米国を代表する企業で「ファミリービジネスは非ファミリーの業績を上回る」という。多くの研究者も、収益性の高さを示すROE(自己資本利益率)や、企業の価値の評価の指標となるトービンのq、利益の伸び率といった項目で数ポイントほどの優位を見いだしている。米国だけでなく、欧州でも同様の結果が出ている。

 ファミリービジネスは四半期決算に踊らされずに長期の視点で経営する特徴があると指摘される。強いリーダーシップを発揮し、迅速に物事を判断しやすい環境にもある。クレイグ氏は「主な構成員である家族が価値観や目標を共有し、未来に対して義務感を持っている」と話す。米ハーバードやスイスのIMDといった欧米の有力ビジネススクールも近年、ファミリービジネスの強さを学ぶ講座やコースを整えている。

 現実のビジネスでも創業家の色濃い企業のダイナミックな動きが目立つ。ピエヒ家とポルシェ家が持ち株会社を通じて実質的に支配している独フォルクスワーゲン(VW)。18年4月の突然の社長交代は、当時の社長の仕事ぶりに、ポルシェ博士の孫のヴォルフガング・ポルシェ氏が満足しなかったためとされる。ウォルトン一族が所有する米ウォルマートは、企業買収を重ねて米アマゾン・ドット・コムに激しく対抗している。

ファミリービジネスは所有と経営のあり方が経年で変化する
●ファミリービジネスの所有と経営の類型
ファミリービジネスは所有と経営のあり方が経年で変化する<br /><span class="fontSizeXS">●ファミリービジネスの所有と経営の類型</span>
注:本誌で作成
続きを読む 2/2 日本は少数株主で支配も
日経ビジネス2019年6月10日号 34~35ページより

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