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スマートフォン向けコンデンサーを中心に事業規模を順調に拡大してきた村田製作所。次なる目標は2兆円の連結売上高の達成だ。今より4000億円超の上積みが必要になる。米中摩擦の激化など目まぐるしく変わる経営環境の中で最強企業が打つ手とは。

村田製作所は「CEATEC」などの見本市で、最新技術の展示を強化している

 「数字ありきではない」。村田製作所の村田恒夫会長兼社長が、昨年11月末に発表した中期構想の目標に慎重な姿勢をみせている。

 掲げる目標は2022年3月期に売上高2兆円、営業利益率17%以上。19年3月期実績(売上高1兆5750億円で営業利益率16.9%)から利益率を維持しながら売上高を4000億円以上上積みする必要がある。

 中期構想で打ち出したのがスマートフォン(スマホ)向けなど「通信」と、自動車向けの「車載」を事業の2本柱に据える戦略。通信では次世代通信技術の「5G」で生まれる新たな需要を取り込み、車載は自動車業界で加速する「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)」の波に乗る構えだ。

 数多くの高シェア部品を抱えていることを踏まえれば、「2兆円という目標は高いハードルではない」(国内の証券アナリスト)との声は多い。

 もともと村田製作所は手堅い企業だ。売上高が同規模の日本電産は30年度に10兆円の売上高目標を掲げるが、村田社長はそうした野心的な目標も口にしない。それでも今の村田社長はいつも以上に慎重になっているようにみえる。村田製作所を取り巻く経営環境が大きく変化しているからだろう。

 合意寸前といわれた米中貿易交渉は5月上旬に中国側が強硬姿勢に転じて中断。中国側から譲歩を引き出そうと、トランプ米大統領は華為技術(ファーウェイ)への締め付けを強める。中国は対抗措置として、レアアース(希土類)の米国への禁輸措置をちらつかせる。世界有数のレアアース産出国の立場を利用した揺さぶりだ。

 激しさを増す米中摩擦。村田製作所も無縁ではいられない。

「車載」と「通信」が成長の軸
●村田製作所の成長戦略の骨子
(写真=左上:Busakorn Pongparnit/Getty Images、右上:TimeStopper/Getty Images)

 村田製作所にとってファーウェイは大口顧客の一社。同社のスマホには村田製作所が供給する積層セラミックコンデンサーなどの電子部品が数多く組み込まれている。ファーウェイが世界でスマホを販売できなくなれば、村田製作所の販売にも影響する。

 EV(電気自動車)などの高性能モーターで使われるレアアースを中国が自国内で抱え込めば、自動車メーカーの電動化シフトが遅れるかもしれない。車載向け事業の強化を急ぐ村田製作所にとっても気が気でないだろう。

日経ビジネス2019年6月3日号 44~47ページより