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 柴谷氏は「学習に対する認識がかなり甘かった」と反省する。実際には天文学的な数の回答を学習させなければ、2500件に上る商材の一つひとつについて、どんな質問にでも答えられるようにはならない。エース級の営業員にそのような数の回答を用意させるのは非現実的だ。

 またソフトバンクブレーンが採用したAIの技術は、自ら新しい回答を見つけ出すような水準に達していない。そのためアドバイスできる内容は限られ、誰も使わないAIが出来上がった。

 開発陣は、「何でもできる」というAIに対するイメージが過大評価であることを身をもって学んだ。その反省を踏まえたうえで、新たな機能の開発に乗り出す。

機能絞り込んで再出発

 「機能は大幅に絞り込むことにした」(柴谷氏)という第2弾では、扱う商材を法人向けのスマホに限った。何でも自由に質問できる形式の対話も諦めた。営業員が口頭でAIに伝えられるのは、スマホの機種、新規や継続などの契約形態、レンタルや売り切りといった提供方法などだけにした。それを基に自動で見積額をはじき出す。

 金額の算出にAIは使っていない。機種や契約形態などによって金額は一意に決まるため、単純な計算式で済む。AIを使っているのは、スマホに向かって口頭や文字でやり取りするための自然言語処理の部分だけである。

 AIで当初期待した性能が出せずに悩む企業は少なくない。MM総研の調査では、AIを導入した日本企業の23%が「想定より解決できることが少なかった」と回答している。

 「AIに対する期待値を上げすぎず、現実的な解を模索することが大切」(柴谷氏)。これこそが教訓だ。