時代に合わせて給与制度をどう改め、機能するように磨いていくか。激しい人材獲得競争に、従来の年功型では対応しきれない。社員が納得できる仕組みをつくることが、改革の第一歩になる。

 NTTデータが2018年12月に始めた新たな給与制度「アドバンスド・プロフェッショナル(ADP)」は、古株のシステム会社としては思い切った取り組みだと業界で受け止められた。AIやIoT、クラウドなど先端分野でトップクラスの技術者やコンサルタントを雇うため、転職市場での評価を根拠に金額を算出して高給を提示する。契約は1年ごと。米IT大手に競り負けることのない水準にするとしており、一般社員の年間平均給与が820万円なのに対し、制度利用者は数千万円になる。

 まず数人の募集枠を設けた。候補者を選考する人事本部の川田浩司課長は「バイネーム(指名)で仕事を請け負う実力を持つ人材を採用したい」と話す。ただ、まだ1人も採用は決まっていない。先端分野で各国のIT大手が繰り広げる人材獲得の競争が極めて熾烈な現状を映し出しているようだ。

 メーク・オア・バイ──。極論すれば企業にとって人材は育てるか、買うかの2択だ。育てるのには時間がかかり、外部から採用しても年功型給与では組織に溶け込むのが難しい。技術も事業モデルも一夜にして変わるディスラプション(創造的破壊)の時代。新しい事業に対応できる人材をどうやって確保すればいいのだろうか。

転職市場での価値を尺度に

<span class="fontBold">LINEは激しい人材獲得競争に直面している(写真は落合紀貴執行役員)</span>(写真=陶山 勉)
LINEは激しい人材獲得競争に直面している(写真は落合紀貴執行役員)(写真=陶山 勉)

 急成長を続けるLINE。その給与の仕組みは人材獲得を強く意識している。社内と転職市場の双方での評価額を比べ、高い方を実際の金額として採用するのだ。給与カーブやテーブルといった考え方は存在しない。給料をいくらにするか、入社希望者を採用するかは、事業や部門を担当する執行役員が基本的な決定権を持つ。

 年2回の評価で重視するのは役割だ。その社員と同じ仕事を担当し、同じような成果を出せる人が、最近の転職市場でどの程度の処遇を得ているかが基準になる。例えば年収700万円だった人は、同じ役割・能力の中途採用者が800万円でLINEに入社すれば、年収が100万円増える。また、その逆の現象もあり得る。執行役員が面談し、前の年の貢献度を勘案しながら最終的な金額を決めていく。

 落合紀貴執行役員は「最も避けなければならないのは、必要な人材が確保できないことだ」と断言する。世界的な人材獲得競争の渦中にいるからこそ、それに合わせた給与と評価の仕組みが欠かせないという。そのために選んだのが転職市場での価値という尺度だ。社員にとっては、外からの客観的な評価が加わるから透明感もあり、納得が得やすい仕組みといえるだろう。

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