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一物一価は、供給者と消費者の双方にとって合理的な仕組みだった。しかし時代は進み、消費者の価格に関する意識も急速に変わりつつある。固定価格にしがみつく企業は淘汰される。そんな未来がすぐそこに迫っている。

日本橋に開業した越後屋は正札販売という「発明」をし(写真左端の浮世絵)、このイノベーションはT型フォードの生産開始に始まる大量生産時代を支えることになった(同中央左)。価格を固定することで消費者の支持を得てきた小売業(同中央右)だが、メルカリなど新たなインターネットサービス(同右端)の登場で、消費者意識は変わりつつある(写真=左からアフロ、Hulton Archive/Getty Images、ロイター/アフロ、Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 販売価格を柔軟に動かすダイナミック・プライシング。本特集ではここまで、モノからサービスまで広範囲に拡大する新たな取り組みを、現代のイノベーションだと位置づけてきた。だが歴史を振り返れば「価格を動かさない」こともまた、商いの根幹を一変させたイノベーションだった。

 その担い手となったのが、伊勢・松坂に生まれた商人、三井高利だ。延宝元年(1673年)、江戸・日本橋に間口9尺(2.7m)の店舗を借り、呉服店「越後屋」ののれんを掲げた。その後、三越へと発展するこの店が、今も流通史の教科書に残る、ある「発明」をする。