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好業績に潜む変調の兆し

 日本でジワリと進む「サムスン離れ」。だが、足元の業績は好調そのものだ。18年通期の連結営業利益は58兆8900億ウォン(約5.9兆円)と過去最高を記録した。かつてのライバルだった国内電機大手6社の今期の営業利益見通しの合計額(2兆4170億円)の約2.5倍の規模だ。韓国国内のライバル、LG電子の営業利益が2兆7000億ウォン(約2700億円)と日本の電機並みの水準で足踏みしている現状を考えると、まさに独り勝ちと言っていい。

直近四半期は減益も通期は絶好調
●サムスン電子の連結業績推移
サムスン電子は半導体事業が営業利益の7割以上を占め、テレビやスマートフォンなど最終製品の利益貢献は小さい
(写真=AP/アフロ)

 だが業績をつぶさに見ると、決して楽観はできない。18年10~12月期は営業利益が前年同期比3割減の10兆8000億ウォン(約1兆800億円)と四半期として16年7~9月期以来、約2年ぶりの減益になった。半導体メモリーの価格が下落したためだ。データセンター向けの投資が一巡したことで、市場関係者は「需給サイクルの谷間を迎えている」(IHSマークイットの南川明主席アナリスト)と見ており、メモリー首位のサムスンが影響を色濃く受けた。

 もっとも変調の本質はそこではない。営業利益の大半は半導体で稼いでいる点だ。これまでは半導体の需給サイクルの谷間を補うように、自社の最先端部品を搭載したテレビなどの最終商品がヒットした。だが、「現在は半導体メモリーに頼り切っている」(日本総研の向山英彦上席主任研究員)と多くの研究者は見ている。谷間を補うべき事業は苦戦中で、半導体を失えば、サムスンの利益水準は、LG並みに低くなる可能性すらある。

利益水準は国内電機並み
●LG電子の連結業績推移
注:1ウォン=約0.1円
LG電子はテレビや白物家電は堅調だが、スマートフォンは中国勢の台頭もあり収益性が低迷している(写真=LG Electronics/AP/アフロ)

 その筆頭が冒頭で紹介したスマホ事業だ。中国での不振が続き、13年に2割を占めた現地シェアがほぼゼロにまで低下している。昨年末には中国天津の携帯電話工場の稼働を中断したほどだ。16年に地上配備型ミサイル防衛システム(THAAD)の配備を決めたことで韓国製品の不買運動が広がり、サムスンのスマホも勢いを失った。

 追い打ちをかけたのが中国企業の台頭だ。ファーウェイ、OPPO(オッポ)、vivo(ビボ)などが急速に技術力を引き上げている。サムスンは中国を事実上諦め、インドなど新興市場に力を入れ始めた。世界首位のスマホメーカーが蹴散らされる事態となった。

日経ビジネス2019年3月11日号 30~37ページより