日本と韓国の関係がかつてないほどに冷え込んでいる。文在寅(ムン・ジェイン)大統領が歴史問題を繰り返し持ち出していることだけが原因ではない。韓国国会議長は天皇陛下に謝罪を求める発言をし、日本の対韓世論は急速に悪化している。抗日独立運動100年を迎えた3月1日には、韓国政府が大規模な記念行事を開いた。なぜこんなに関係がこじれてしまったのだろう。日本に反発する動きの背景に何があるのか。韓国の政治や経済、企業活動の実態はどうなっているのか。その実相を探る。

(編集委員 田村 賢司、吉野 次郎、佐伯 真也、ニューヨーク支局 篠原 匡、上海支局 広岡 延隆、尾島 島雄)

 韓国政府は3月1日、日本統治下で起きた最大の抗日独立運動「三・一運動」から100年を記念する式典を開いた。文在寅大統領は「歴史を教訓に韓国と日本が力を合わせて被害者の苦痛を実質的に癒やす時、韓日は真の友人になる」と呼びかけ、従軍慰安婦や元徴用工訴訟などに直接は触れなかった。日本側を刺激しないよう配慮したと受け止められている。

 一方で「親日残滓(ざんし)の清算」を進めると話した。植民地統治に協力した人脈に連なる保守系勢力を念頭に「親日は反省すべきことで、独立運動は礼遇されるべきという価値を築く」と述べた。

 着目すべきなのは次の一節だ。「この単純な真実が正義で、正義が真っすぐあることが公正な国の始まり」。朴正煕(パク・チョンヒ)氏ら軍事独裁政権の為政者が経済発展のために温存したのが技術も資本もある日本に通じた「親日派」。それは本来、遇されるべきでない人たちという思いがにじむ。親日派を排して「正義」、つまり正しい国のかたちを取り戻そうという宣言だった。

 日韓関係の阻害を良いと思わない世論もある。しかし、正義を実現しようと呼びかけられれば、うなずかざるを得ない。大統領の考え方は反日と正義とが一体という国民感情を呼び起こしかねない。

 日本はこうした事情を理解して対応しなければ行き詰まる。韓国も日本に批判のマグマがたまっていることを知るべきだ。日韓関係は過去最悪の水準だが、今後も隣国として尊重し、付き合っていかなくてはならない。韓国をより深く知る必要性もまた、かつてないほどに高まっている。

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日経ビジネス2019年3月11日号 28~29ページより目次