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 現在はサンダルからスニーカー、ブーツなど様々な種類の靴をそろえる。中心の価格帯は1足当たり55~95ドル(約6000~1万500円)。ドイツや台湾など海外に10店舗以上を持つ。

 近年はネットでの販売やSNS(交流サイト)の活用にも力を入れている。10人近いスタッフがSNSを通じて情報を発信し、世界の顧客とコミュニケーションを図ることでロイヤルティーを高めている。ネット販売は世界中のほとんどの場所から注文でき、送料は無料だ。アレム氏は「商品価格に送料を含めている」と話す。

カフェの経営にも進出

 アレム氏が注目されているのは、連続起業家でもあるためだ。2年前からガーデン・オブ・コーヒーというカフェチェーンの会社を興し、アディスアベバで2店舗を営業している。

アレム氏がエチオピアで経営するカフェは若者に人気(写真=永川 智子)

 アメリカンコーヒーが1杯55エチオピア・ブル(約215円)と現地の物価水準からするとかなり高いが、夕方になると若者を中心に満席になる。カフェも靴と同様に「エチオピアコーヒーというもともとある資産を最大限に生かす」という発想から起業した。今年には中国、カナダにカフェをオープンする予定だ。

 アレム氏はなぜ起業の道を選んだのか。「22歳ごろに仕事を探したが、有力な就職先がなかった。やっと探し当てた仕事も給料が非常に低い。それならば自分で継続的な仕事を作ろうと考えた」

 アレム氏は頻繁に「ローカル」と「サステナブル」という言葉を使う。「仕事がなく貧困から抜け出せない人たちをたくさん見てきた。そうした人たちに持続的な仕事を提供したい」との思いがある。自らも貧困の中で育っただけに、仕事を生み出し、少しでも貧困を減らしたいとの意識が強い。

 家庭では3人の子供の母親であり、ベビーシッターを雇うなどして経営と育児を両立してきた。アフリカでは都市と農村で貧富の差が大きく、農村出身の女性が都市部でベビーシッターを務めるケースが多い。また、親戚や近隣同士で子供を預け合う風習が残っているため、家庭を持つ母親が働きやすい環境も得やすい。

女性起業家が多いサブサハラ

 アフリカビジネスに精通するエコバンクのエドワード・ジョージ氏は、「アフリカの中小企業経営者に占める女性の比率は非常に高い」と指摘する。

 その傾向は数字で裏付けられている。グローバル・アントレプレナーシップ・モニターの調査によると、女性の労働人口に占める起業家の比率はサハラ砂漠以南(サブサハラ)の各国が欧州各国を大きく上回る。15~16年の調査では、セネガルが30%、カメルーンなどは20%を超えた。一方、英国やドイツなど欧州各国は5%以下。日本はわずか2.8%にすぎない。