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未発達なインフラなどの課題を解決しようと、スタートアップ企業が次々に誕生している。課題解決がビジネス環境の改善につながるだけでなく、新技術の実験の場にもなっている。どのような企業が登場しているのか。課題別に見てみよう。

高度人材が不足

 人口約1300万人を擁するアフリカ屈指の大都市、ラゴスに元米副大統領のアル・ゴア氏や米フェイスブック創業者のマーク・ザッカーバーグ氏らがこぞって出資するスタートアップ企業がある。南アフリカ共和国の英雄、故ネルソン・マンデラ氏から名前を取ったAndela(アンデラ)だ。

Andela
アフリカ中の人材が集まるアンデラのオフィスには、ネルソン・マンデラ氏のイラストが描かれている

 アンデラは、エンジニアを自社で育成し、米国などの大企業からソフトウエアなどの開発を受託する、いわゆるオフショア開発企業だ。世界的に不足するITエンジニアの供給元として注目を集める。ケニアやルワンダにも拠点を持ち、アフリカ大陸全体で同社に在籍するエンジニアは現在1000人超。手厚い同社の研修プログラムの受講者だ。

 「習熟度を5段階に分けた研修を設け、経験がなくても技術を身に付けられる」(広報担当のロティミ・オクンバエ氏)。入社して基本を学ぶ6~8カ月の研修中にも給料が出る。それが終わると、顧客とのプロジェクトに参画。仕事をしながら実践で学ぶだけでなく、オンラインの研修ツールを無料で使える環境を整え、スキルアップを促す。

 産油国のナイジェリアは、原油価格が暴落した2014~16年にかけ経済が停滞。回復しつつある現在も失業率は高く、人口の半分近くがフルタイムの職に就けていない。こうした状況は、アンデラにとってプラスに働く。14年の設立以来、累計応募者は10万人以上。競争率100倍の狭き門で優秀な人材を確保している。弁護士や医師から転身した人もいるという。

 そのアンデラのライバルとされる人材育成スタートアップが16年に設立されたエチオピアのGebeya(ゲベヤ)だ。創業者のフランス系セネガル人、アマドウ・ダフェ氏は大学の授業だけでは大手IT企業が求めるスキルを身に付けることが難しい点に目を付けた。

 そのギャップを埋めるために、ゲベヤは大学を卒業した人などを対象にしたプログラムを用意。ゲベヤのプログラムを修了した人が、IT企業などから採用された場合に、企業から手数料を受け取る仕組みだ。仏大手通信会社のオレンジもゲベヤの卒業生を既に何人も採用。今やアフリカが世界のIT人材を支える一大拠点になりつつある。

非効率な物流

 「物流を制す者がアフリカを制す」。06年からアフリカに中古車を輸出しているビィ・フォアード(東京都調布市)の山川博功社長はこう言い切る。日本の中古車は状態がいいため、アフリカで大人気。だが、船便で日本からアフリカの港に送られた後の陸路の確保に苦労するという。

 例えば、日本からの船が到着する港湾都市、ダルエスサラームから内陸国ザンビアのルサカまで、エンジンを送ろうとしたときのこと。2000kmの距離は、沖縄と青森の距離とほぼ同じだが、輸送費は7000ドル(約77万円)もかかった。定期便も高速道路もなく、31時間も走行するためドライバーは2人必要で、宿泊費や燃料代、空のトラックで帰ってくることを勘案すると、この値段になってしまうのだという。

 アフリカでビジネスをする際に物流がネックになると考えているのは、どの国の企業も同じだ。そしてそこに商機を見いだしている起業家も大勢いる。その一人が、ケニアのスタートアップ、Sendy(センディ)の共同創業者でCOO(最高執行責任者)のマライカ・ジャッド氏だ。

Sendy
企業間物流だけでなく、二輪車による小型の荷物の配送プラットフォームも手掛ける。登録するドライバー(右)とジャッドCOO

 「非効率な運搬を改善すれば、物流のコストは下げられる」。ジャッド氏によれば、ケニアの80%の物流が個人ドライバーのような経済統計などには出てこないインフォーマルセクターによって賄われているという。こうした個人ドライバーは組織立って仕事を取ることがないため、5トントラックなのに2トン分の荷物しか集められないこともある。ローンが残っているドライバーも多く「安定した顧客がいないので、仕事が入る時に高い価格を要求する」(ジャッド氏)という状況になる。