全5212文字
貧困層の信用を創造する

中島徳至

4150
(写真=北山 宏一)

 自前の愛車を購入する──。ある3輪タクシー運転手は決してかなうことのなかった夢をかなえた。中島が手掛けるサービスのたまものだ。

 フィリピンで個人の信用力を可視化する仕組みを構築し、貧困層でもローンやリースが利用できる道を開いた。販売する車両に装置を設置して日々の運行情報を収集。働く意欲を見える化しつつ、滞納した場合にはエンジンを停止できる機能も導入した。運転手は収入が途絶えないようきちんと返済するようになり、金融機関は融資のハードルを下げた。

 もともとはEV(電気自動車)開発のベンチャーを率いていた。3輪EVを普及させ大気汚染を解消しようと同国にやってきたが、出会ったのはローンを組めない人たちだった。

 「環境に優しいEVを作っても、売れなければ社会変革にはつながらない」と痛感。資金調達に苦労した自身と彼らの姿を重ねながら、事業にいそしんでいる。

アジアに高度医療を届ける

吉岡秀人

4250

 2004年に国際医療ボランティア団体「ジャパンハート 」を設立。ミャンマーとカンボジアを中心に活動をしている。設立以来、東南アジアで実施した治療件数は17万件を超える。事業範囲は障がい者の自立支援から、貧困層の子供の養育まで幅広く、多くのボランティアがその活動を支えてきた。

 東南アジアで活動を始めたのは1995年。医療器具はおろか電力すらまともに供給されないミャンマーの僻地に1人入り込み、来る日も来る日も人々を治療し続けた。その活動が徐々に知れ渡り、人や資金が集まり始める。「途上国で先進国並みの医療を提供することを目指す」。吉岡の理念に賛同し、力になりたいと動く人々の輪が確実に広がっている。

塗料で命を救う

石野 博

4350
(写真=行友 重治)

 塗料には人命を救う力がある。石野博はアフリカで確信した。関西ペイントの社長としてグローバル展開を加速する中、毎年雨期になるとマラリアで多くの人が命を落としていることを知る。その状況を家の壁に殺虫効果のある化合物を含んだ特殊な塗料を塗ることで蚊を寄せ付けなくし、改善した。

 塗料の可能性に気付いた石野は、マラリアだけではなく様々な病気で苦しむ人たちの生活改善に役立つ「命を救う塗料」の開発で陣頭指揮を執る。エイズ患者などに向けて家の中を無菌状態に近づける特殊塗料を開発し、花粉症で苦しむ人向けに花粉を不活性化する塗料の研究を急ぐ。塗料メーカーとしての新たな存在価値を世界に示す。