植物研究で温暖化に挑む

清水健太郎

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(写真= 北山 宏一)
(写真= 北山 宏一)

 今の環境に適応するように品種改良された農作物が、温暖化によって壊滅する──。そんな未来に備える研究者がスイスにいる。清水健太郎だ。テーマは世界三大穀物の一つ、小麦。気候が変動した環境でも育つ新種をどう開発すればいいか研究中だ。

 清水は、ある発見をした。異なるゲノムを持った植物が組み合わさった時に急激に進化するというメカニズムだ。20世紀に入って発見された新種の植物を研究。それは乾いた場所で育つ種と水の多い場所に育つ種が偶然、交雑。結果、乾燥した環境でも水が多い環境でも生息可能になっていた。このメカニズムを応用し温暖化に強い小麦を創造しようとしている。

 この進化のメカニズムを発見できたのは、清水独特の研究領域がある。通常、植物学の研究者は細胞やゲノムを研究する「ミクロ生物学」か、生態系や環境を調べる「マクロ生物学」のいずれかを専門にする。だが清水はその両方の視点を持つ。それがゲノムと環境変化を結びつける研究成果につながった。温暖化が環境に与える影響が徐々に大きくなる中、食糧危機を救えるか、時間との勝負だ。

女性起業家の救世主

堀江愛利

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 米国で女性起業家の支援事業を展開する。だが、女性優位の社会の実現が目的ではない。女性が活躍することで社会を良くしたいのだ。

 18歳で単身渡米。大学卒業後は米IBMで勤務し、シリコンバレーでも働いた。しかし、出産と介護で生活は一変、仕事と母親業の両立に苦悩した。

 母の死をきっかけに人生を見つめ直した。「次世代に残せる仕事がしたい」。そこで起業を志したが、シリコンバレーは男性社会。女性への門戸は狭く、共に戦う女性起業家が失意のうちに去るのを見て、おかしいと感じた。その思いがウーマンズ・スタートアップ・ラボの設立につながった。

 「成功しないのは女性のせいではない。未来の新しい構造を自分たちで作って、自分たちで強くなればいい」。堀江は今、それを実感している。

次のノーベル賞ウィナーは誰か

難病治療に光明

坂口志文

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(写真=菅野 勝男)
(写真=菅野 勝男)

 ウイルスや細菌などの異物が体内に侵入した際に、排除しようとする免疫反応。本来であれば身体を守る仕組みだが、この免疫反応が暴走すると、花粉症のようなアレルギーや、若年性糖尿病や関節リウマチといった自己免疫疾患を引き起こす。坂口の研究はこうした症状に苦しむ多くの患者に光明をもたらすものだ。

 坂口が発見したのは免疫反応を抑制する「制御性T細胞」。臓器などの移植に伴う拒絶反応を減らすことにもつながるとして、難病治療の切り札である再生医療の分野でも期待が高まっている。

 近年の研究では、制御性T細胞で免疫反応だけでなく、炎症反応も抑えられることが分かってきた。アルツハイマー病やパーキンソン病、動脈硬化といった疾患にまで応用の可能性が広がっていることを意味する。

 逆転の発想でがん治療にも挑戦する。免疫反応を抑える制御性T細胞をがん細胞の中から除去。ブレーキを解除することで免疫反応を活性化させるやり方だ。

 免疫学は日本の「お家芸」。2018年の本庶佑に続くノーベル生理学・医学賞の有力候補として世界の注目を集めている。

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