腸内細菌の“魔術師”

本田賢也

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(写真= 阿部 卓功)
(写真= 阿部 卓功)

 人間の腸の中にいる腸内細菌はこれまで特に重要な存在ではないと考えられてきた。だが、過去10年ほどで腸内細菌が免疫細胞に様々な影響を与えていることが分かりつつある。この分野で最先端を走っているのが慶応義塾大学医学部教授の本田賢也だ。

 彼が成し遂げた重要な発見の一つは、暴走すると様々な疾患の原因となる免疫機能を抑える腸内細菌を見つけたことだ。ヒトの便には少なくとも数百種類の菌がいる。その菌を無菌マウスに投与したところ、免疫を抑制する制御性T細胞が増えることが判明した。それらの中から不要な菌を取り除き、17種類まで絞り込んだ。

 最近も大きな発見があった。がん細胞を殺すCD8+T細胞を増やす菌を見つけたのだ。

 2018年のノーベル生理学・医学賞を受賞した京都大学特別教授の本庶佑の研究成果を基に作られたオプジーボはがん細胞を攻撃するという免疫系の本来の機能を刺激する治療薬だが、CD8+T細胞を増やすわけではない。それに対して本田が見つけた11種類の菌はCD8+T細胞自体を増やす。「この菌株を飲めば、オプジーボが効かなかった患者にも効く可能性がある」

 腸内細菌は肥満やアトピー性皮膚炎にも影響を与えていると考えられている。化合物を使った薬は副作用の恐れが常にあるが、腸内細菌は人間がもともと持っているもので副作用は起こりにくい。これからも生きた菌を使った治療の地平を切り開いていくつもりだ。

SF系起業家

羽生雄毅

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(写真=竹井 俊晴)
(写真=竹井 俊晴)

 フードテックの分野で注目を集める培養肉。動物を殺さずに細胞から肉を作れるため、近未来の地球に欠かせないタンパク源になると期待されている。

 課題はコスト。だが、羽生は従来比1万分の1以下のコストで培養できる技術を開発した。ソニーの初代犬型ロボット「AIBO」の生みの親として知られるソニーコンピュータサイエンス研究所所長の北野宏明をして、「今一番面白い起業家」と言わしめる。

 幼い頃からSFが好きで、自らSFアニメを製作・公開するほどの腕前だ。アイデンティティーは起業家というより、むしろ“SF系クリエーター”。培養肉に挑戦したのも、「SFで鉄板」のコンテンツだからという、変わり者だ。

 生まれは日本だが、1歳から5歳までをタンザニア、中学・高校時代はパキスタンで過ごした。英オックスフォード大学に進み、博士課程を修了。起業のきっかけとなったのは、ふらりと滞在したロシアで宇宙飛行士の訓練施設があった「星の街」に行ったことなど。「自分が動けば何かが起こる」

 未来の人類を救うかもしれない羽生の頭の中は、SFのように計り知れない。

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