2022年10月17日号
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現場リポート編 CASE1
新電力の相次ぐ値上げ、破綻 電気代2倍となった遊園地の悲哀
電力を巡って、日本各地でさまざまな問題が噴出している。市場原理の旗振り役、新電力の相次ぐ破綻と、それに伴う電気料金の高騰。環境問題の切り札と期待された風力やバイオマスなどの再生可能エネルギーは、費用負担や環境への影響などで賛否が分かれ、街の分断を招いている。原子力も核ごみ処分問題が未解決で、その受け入れを巡って北海道の街が揺れる。電力問題できしむ、日本各地の現場に記者が足を運んだ。
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現場リポート編 CASE2
待ったがかかった風力発電 「環境のため」両立せずジレンマ
「撤退していただいて、ありがたい」──。徳島県海陽町の三浦茂貴町長は、山地での風力発電所の建設計画がこのほど中止となったことに安堵の表情を浮かべた。ミネラルウオーターよりも、水道水がきれいな町。このキャッチフレーズに象徴されるように、海陽町は知る人ぞ知る自然の宝庫だ。かつて研究者がこの町の水道水の水質を調べたところ、市販されているミネラルウオーターより飲み水として優れた特質を確認できたという。
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現場リポート編 CASE3
被災地のエネルギー復興 バイオマス発電所、負担巡り紛糾
福島県飯舘村を訪れると、面積の8割が森林で緑の豊かな風景が広がる。その木材を活用しようと、今夏からバイオマス発電所の建設が始まった。森は手入れをしないと荒れてしまうので、継続的に管理する方策として期待がかかっている。
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現場リポート編 CASE4
着地点見えぬ核ごみ問題 静かな漁業の町が分断された
想望──。札幌市から車で約3時間、北海道西南部の港町・寿都町にある弁慶岬。「だし風」と呼ばれる強い風が吹く岬にそびえ立つ弁慶像の台座に、その2文字が刻まれていた。
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分析・予測編 PART1
産業界を押しつぶす負担増 電力料金の上限見直しが始まる
「もう販売価格への転嫁しかない」「将来への投資ができない」──。エネルギー価格の高騰で産業界が悲鳴を上げている。今夏、7年ぶりに全国規模で実施された節電要請は乗り切れたが、問題は冬だ。ロシアはサハリン2からの天然ガス供給途絶のカードを切りかねない。事態は不測の停電のみならず、過去に例がない「節ガス」要請に進む可能性も。日本にできることは何か。まずは原発再稼働に、慎重に真剣に取り組むべきだ。
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分析・予測編 PART2
寒波が来れば需給逼迫 現実味帯びる史上初「節ガス」
「我々は何も失っておらず、これからも失うことはない」。9月7日、ロシア・ウラジオストクで開かれた国際会議「東方経済フォーラム」でプーチン大統領はこう強調した。同フォーラムは、外資の投資を呼び込むためプーチン氏の肝煎りで2015年から開催。だが、第7回となった22年のフォーラムは、対立関係にある欧米中心に外国からの参加者は激減。日本政府も参加を見送った。
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分析・予測編 PART3
国富流出が止まらない 原発再稼働で国は前面に立て
「どの時期と申し上げられる段階ではない」。9月30日、東京電力ホールディングスが開いた会見で、小早川智明社長は、柏崎刈羽原子力発電所6、7号機の再稼働の目標についてこう答えた。同原発は2021年、テロ対策工事で不備が発覚。現在、複数の改革に取り組んでいるが、原子力規制委員会や地元の了承をまだ得られていない。電力の最大需要地である東電管内での原発再稼働が待たれるが、「今冬の稼働は現実的に難しい」と東電関係者は話す。
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校了乙
10月17日号特集「薄氷のエネルギー」を担当デスクが解説
日経ビジネス10月17日号特集「薄氷のエネルギー この冬を乗り越えられるか」の読みどころを、担当した谷口徹也デスクが3分間で解説する。