2022年10月3日号
-
PROLOGUE
肥薩線は3度死ぬ 廃線に揺れるローカル線
ひしゃげたレール、跡形もなく崩れたホームや待合室──。爆撃を受けたかのような惨状を目の当たりにして言葉を失う。JR肥薩線の瀬戸石駅(熊本県八代市)は2020年7月、豪雨による球磨川の氾濫にのみ込まれ、壊滅的な被害を受けた。沿線では住宅を再建するつち音が響き、道路や橋も仮復旧が進んでいるが、鉄道だけ2年間、時の流れが止まっている。
-
PART1
“国鉄を上回る”赤字に 脱・旅客依存へもがくJR
国鉄の分割民営化によりJRグループが発足して35年、最大の危機が訪れた。新型コロナウイルス禍で乗客が激減し、各社の経営に深刻なダメージを与えている。事業構造の改革に向け、現場ではあの手この手の試行錯誤が続いている。
-
PART2
崖っぷちのローカル線 存廃の決断待ったなし
人口減少とコロナ禍で、JR在来線の6割が国鉄時代の廃止基準を下回る。JR頼みの路線維持はもはや限界で、国主導の存廃論議が全国で始まる。鉄道存続かバスか、それとも他に方法があるか。地方に残された時間は少ない。
-
PART3
時代の先端生み出せず 不透明な次の50年
新幹線が誕生して間もなく60年がたつが、今も建設が続いている。あと3年で国鉄の「寿命」を超えるJRは、果たして今の形のままでいいのか。時代の変化についていけない、鉄道の現実が浮かび上がる。
-
EPILOGUE
「鉄道会社」の殻を破れ 目指すは「MaaS」企業
2019年4月、JR九州の木下貴友氏は、同じ福岡に本社を構える大手私鉄・西日本鉄道の門をたたいた。西鉄はグループ会社を含めて約2700台のバスを保有する、日本最大のバス事業者。九州一円に高速バス路線を展開し、JR九州とは長年、激しい競争を繰り広げてきた。そんな“敵地”にあえて乗り込んだのは、鉄道やバス、タクシーなどを組み合わせる新しい移動サービス「MaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)」の実現のために、西鉄の協力が不可欠と考えたからだった。
-
INTERVIEW
JR西日本社長に聞く JR発足以来の分岐点、個別最適から協調へ
2022年4月に赤字ローカル線の収支を公表したJR西日本。国鉄から引きずる問題を解決しようと批判覚悟で踏み切った。JRのこれまでとこれからをどう考えるか、長谷川一明社長に聞いた。
-
校了乙
10月3日号特集「鉄道の岐路」を担当記者が解説
日経ビジネス10月3日号特集「鉄道の岐路 民営化35年 JRの試練」の読みどころを、担当した伊藤正倫記者が3分間で解説する。