2021年11月8日号
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RERORTAGE
需要蒸発、見たことのない景色 経営は楽観と悲観に揺れた
見たことのない景色だった。磨かれた灰色の床が、高い天井の照明をむなしく映す。旅の高揚感に足を早める人が行き交う姿も、搭乗手続きにいら立ちながら並ぶ人たちの列もない。そのにぎやかな残像たちを重ねれば、目の前に広がる静けさは異様の一言だろう。電光掲示板が映す世界の都市の名の横には「欠航」の文字が並んでいる。
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DATA
財務・営業データで2社を徹底分析、ぜい肉を落とし利益を絞り出す
新型コロナウイルスの感染拡大が始まっておよそ600日。17ページまでに見たように、需要が蒸発した航空大手2社は生き残りをかけた苦闘を続けた。その軌跡を、本欄では営業・財務などのデータで振り返る。
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INTERVIEW1
コロナ禍で逆風も、拡大路線に後悔なし――芝田浩二 ANAホールディングス 代表取締役専務執行役員
積極的に路線網を開拓してきたこの10年。突然の危機で痛手を負った。ただ、攻めて利益を生んできたからこそ、アフターコロナが見えてきた。売り上げを増やし、コストを抑える。基本に立ち返って次を見据える。
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INTERVIEW2
コロナ禍で生きた破綻の教訓――菊山英樹 日本航空 代表取締役専務執行役員
拡大路線を取ったANAHDを横目に、JALが進んだ保守的な事業戦略。11年前の経営破綻の経験は今も心に刻みつけられている。コロナ禍では先手先手で「守りながら攻める」一手を打ち続けた。
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LCC編
ビジネス需要蒸発の先へ LCCなくして成長なし 問われるブランド戦略
コロナ禍でビジネス需要が蒸発し、レジャー・帰省需要に強いLCC事業に両陣営とも注力する。コードシェアなどで連携を強化するANAHDと、放任して果実を取るJAL。グループ内で、それぞれが強みを失わずにシナジーを生むブランド戦略が求められる。
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マイル編
「飛べない世界」でも堅調だった 地上で回すマイル経済 “良質”な顧客を収益に
コロナ禍で航空需要が激減しても、マイレージ・クレジットカード事業の顧客は離れなかった。航空一本足の事業構造が抱える脆弱性を痛感した両社とも強化を急ぐ。米国系には利益の3割を稼ぐところも。成長余地はまだある。
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EPILOGUE
望めぬ合従連衡 コロナ禍の先、ANA・JALが突き付けられる問い
危機はしばしば再編を呼ぶが、2社が統合する可能性は低い。両社はコロナ禍がもたらした荒野に、自ら活路を見いださなければならない。「航空業界」の固定観念を打ち破った先に未来が見えてくるだろう。